国内山行記録    熊谷トレッキング同人

‘雪がなかった’ 初冬の甲斐駒ヶ岳報告

宮田 幸男



山域山名:南アルプス・甲斐駒ヶ岳(長野県、山梨県)
期  日:2003年11月21日(金)〜24日(月)
参 加 者:CL宮田 SL青木 井上 (計3名)
行  程:
 11/21(金) 熊谷青木邸(16:30)=白樺湖=戸台仙流荘前(22:00)<テント泊>
11/22(土) 戸台仙流荘前=戸台橋本山荘1000m(7:50)→砂防ダム(8:50/9:00)→
      角兵衛沢コース分岐(9:50/10:00)→丹渓山荘1460m(10:30)→
      双児沢出合(10:50/11:30)→北沢峠2035m(13:15)→
      長衛小屋キャンプ指定地1980m(13:25)<テント泊;B.C.>
11/23(日) B.C.1980m(7:20)→仙水小屋(7:45)→仙水峠2264m(8:10/8:20)→
      2520m(8:55/9:05→)駒津峰2752m(9:45/10:00)→2820m(10:40/10:45)→
      甲斐駒ヶ岳2967m(11:05/12:00)→駒津峰(13:00/13:15)→
      仙水峠(13:55/14:05)→B.C.(14:40)
11/24(月) B.C.(7:20)→双児沢出合(8:20/8:30)→砂防ダム(9:30/9:40)→
      橋本山荘(10:30)=戸台仙流荘=熊谷

11/21(晴)
 青木君の自宅を経由し、本庄児玉ICから佐久ICへ。巨大なショッピングセンター・ベイシアで買い物。白樺湖畔のすずらんの湯に浸かり戸台口へ。夏の南アルプス林道のリムジンバス事務室前にテントを張る。寒冷前線が通過した直後で、強風がすごかった。

11/22(曇り後晴)
 午前7時に約束どおり井上君が合流。共同装備分けをして、車で戸台へ向かう。以前に駐車した河原は工事中のため通行止めの表示。橋本山荘のおばさんに聞くと、奥の駐車場に置いていってよいとのこと。ここから歩き始める。5分も歩くとその河原に下り、甲斐駒の山頂が望める。雪は北面の日陰にかすかに見える程度であった。戸台川河原を黙々と歩く。時折、雪雲が流れてきて、仙丈や甲斐駒、鋸岳の山頂付近が雲に隠れる。気温は0度くらいか。鋸岳分岐で男性2人パーティが角兵衛沢コースに登って行った。
 丹渓荘下を通過して、双児沢出合で昼食。マグヌードルがおいしい。八丁坂の急登を登り、車道を3,4回横切ると北沢峠へ。1997年仙丈岳の時は降りしきる冷雨に消耗したが、今回は楽に到着。天気の違いは大きい。峠の長衛荘前にエスパースが1張り。林道を更に歩き、キャンプ指定地のある北沢長衛小屋に到着。1997年は冬季小屋を利用させてもらったが、今回はしっかりと南京錠とロープで閉鎖。予定どおりテントを張る。ダンロップに3人、余裕である。小屋前の1本のホースは常時水が流しっぱなし。文句なしのテン場である。峠のふたつの小屋とも、年末年始は12/30〜1/3の素泊まりのみ営業との看板あり。
 日射しがあるうちにと、担ぎ上げたビールで乾杯。午後2時40分頃に、低い太陽は小仙丈岳の東尾根に消えた。小仙丈岳には霧氷が見えるが、積雪はほとんどなし。前回は5合目から上部が白かったはずだ。今年は、極端に雪が少ない。テン場には、夕方に到着した単独者のみ。静かだ。夜は、見事な満天の星空だった。

11/23(快晴)
 朝はかなり冷え込んだ。テント内部が凍りつき、外に置いたあった水はすべて凍っていた。マイナス10度近くに下がったようだ。しかし、風は収まった。朝陽に照らされ、摩利支天が赤く浮かび上がっていた。感動の景色だった。
 とりあえず、アイゼンとピッケルを装備し出発する。仙水峠から見る摩利支天は、水晶沢をはさみ、とても大きい。駒津峰の急登に取り付くと、針葉樹林の合間から、塩見岳や鳳凰オベリスクが、その右手に7合目から雪化粧した富士山がよく見える。駒津峰に立つと、昨日は冬の嵐に包まれたであろう、真っ白な北アルプスが目に飛び込む。白山も白いが、乗鞍と御岳は山頂部のみ。中央アルプスはほとんど積もっていないようだ。北岳から間ノ岳、塩見から悪沢岳の3千メートル級の主稜線は積もった雪が光っていた。南アルプスは、南岸低気圧の支配下の雪だ。
 見上げる甲斐駒には雪が見当たらない。駒津峰にアイゼンとピッケルをデポして直登ルートを登る。「雪があったら」を想像しながら登る。手強い岩場が2,3箇所、条件によってはロープが必要だろう。山頂直下もかなりの急斜面。岩が露出している場所もあり、下りは滑落要注意。やっぱり、甲斐駒は厳しい冬山登山になる。
 山頂に着くと、徳重さんら大宮労山6人パーティと遭遇する。黒戸尾根の五合目小屋をベースとのこと。高野さんからは、村越先生遺稿集のお礼を丁重に言われる。「闘病記は、先生の気持ちを思うと、胸が詰まされる思いになる」と。また、熊トレは若者がたくさんいて、うらやましいとも。今回の3人の平均年齢はちょうど30歳。確かに若い。「ほかの若者達、後輩諸君、もっと山に行こう。村越先生も天国で、そう言っているはずだぞ」。本峰を登っている最中も、先生が以前に語っていたことを思い出していた。「大学時代に単独で冬の甲斐駒に登ったが、下降中に転倒し、運良く岩に助けられ止まり、命拾いをしたことがある。絶対に、山で思い上がった行動をしてはいけないんだ」と。
 山頂で360度の大展望を楽しみ下山。駒津峰でデポ品を回収する。単独者は下山したようだ。今宵は、我々のみで占領である。長いアルコールタイムに浸かる。井上君のお惚気話も楽しい話題であった。
11/24(快晴)
 今日も良い天気だ。気温はいくらか高い。昨晩に飲み過ぎて少し頭が痛い。少々反省。テントを撤収して下山路を快調に下り、3時間で戸台へ。仙流荘鉱泉湯に浸かり、高遠で蕎麦、りんごを買い帰路へ。                      (宮田記)