国内山行記録    熊谷トレッキング同人

大雪山 花紀行

◇山行への準備
*6月3日(金) ミーティング 於:熊谷大里教育会館
*6月27日(月) トレーニング山行  北八ツ・双子池、亀甲池
 4日間かけて北海道の屋根を歩いてくるこの山行(山中2日)、最もポピュラーなコースとは言え参加者7人中6人は初めて行く所で、事前にそれなりの時間をとって準備を行った。
 高齢者グループで荷物の軽量化は必定、宿泊する黒岳石室は寝袋はあるが食事は自炊、水が十分にはない事への対応などを検討する。足慣らしの日帰り山行も実施し、そこで携帯食の試食もやろうという事になり、そんな中で、メンバーの夢と期待が大きく高まっていった。かつてのヒマラヤトレッキングでは、何回も事前の準備を重ねて、みんなで計画を煮つめていくワクワクするような楽しさ味わったものであるが、今回も久しぶりにその気持ちを実感することができた。

◇ 北八ツ・トレーニング山行
 熊谷5:30大河原峠9:05−双子池10:00/10:15−亀甲池11:35/12:15−大河原峠13:20

 この山行は会山行として提案したが、参加者は大雪山へ行く7人だけとなった。2台の車に分乗して佐久インターから大河原峠に向かう。途中連絡不十分で別々の道を走った所もあったが、無事に峠で合流。下は晴れ模様だったが、峠は曇りで山頂はガスに隠れていた。濡れない程度の水滴の混じった西風が吹いてちょっと寒い。一日この天気が続いていた。
 一行7人、ゆっくりと山の雰囲気を味わいながら、双子山、双子池とたどり、亀甲池で用意した携帯食で昼食。どれがうまいか、みんなで食べ比べするのも楽しかった。池畔の亀甲模様も確認。予定にあった北横岳山頂はガスが取れる見込みがなかったのでカットして、滝ノ湯沢の源頭を経由して大河原峠に戻る。草原の双子山、2つの池の間の苔むした薄暗い樹林、峠付近の開けたお花畑と、楽しみながら気楽に歩けるコースである。
 下山の後、2時過ぎには「ウエルサンピア佐久」の温泉に浸かって汗を流し、5時過ぎに熊谷に帰着した。

◇ 大雪山行


7月6日(水)

 梅雨模様のなか、飛行機は30分ほど遅れて羽田を発ち北へ向かった。雲の上に出ると、窓の外はもう雲しか見えない。北海道も明日まで雨模様が続くという予報だったが、空港に近づくと十勝連峰の一部らしい山が見え、旭川近辺はあまり暗くない曇天だった。今回の企画者、吉田さんの周到な計画にそって、空港三階の食堂で昼食をとり、予約のタクシーで旭岳温泉の宿湧駒荘へ。到着すると、何と旭岳が山頂まで見える。天候は回復傾向かと期待を抱いた。一休みの後、ロープウエイ駅まで様子見がてらの散策。今朝は強風のためゴンドラは運転中止で、風が鎮まった9時から動いたという。宿へ戻る頃より小雨が降りだした。

7月7日(木)

 旭岳温泉(5:25)−−ロープウエイ駅(5:45)-−姿見駅(6:10/6:25)−−姿見の池(6:45)−−旭岳山頂(9:20/9:45)−−間宮岳(11:05/11:15)−−御鉢平展望台(13:25/13:37)−−黒岳石室.(14:25)黒岳往復(15:40〜16:45)

 朝一番の6時のロープウエイに乗るべく、5時半前に宿を出た。朝食、昼食は昨夜のうちに預かったオニギリで、宿で朝食を済ませた人もいる。外は細かい小雨が降っており風はほとんどない。30人くらいの登山客といっしょに姿見駅で降り、雨具を着け、隊を整えて旭岳への登りにかかる。周囲はガスがかかって薄暗く、視界は50〜100米程度。気が滅入ってしまうような天候だが、さすがに7月の大雪山。キバナシャクナゲ、エゾツガザクラをはじめ、豊かな高山植物と残雪が迎えてくれた。

 小雨は、時に風上側に水滴がつく程度の湿ったガスになったりで、午後も含め「降られた」という程ではなかった。展望はやはりほとんどダメ。気温が下がり、手袋をつけないと手が冷たい。高齢者グループの我々相応のペースでゆっくり歩いたのでほとんど汗は出ず、私個人は下着が半袖だったので腕が冷えているのが気になった。今回は水の少ないコースで、隊全体で水の消費に気を配ったが、初日の行程ではあまり使わず、この点は幸いした。
 3時間近くかけて旭岳山頂へ。同じゴンドラに乗っていた登山者はもう誰もいない。頂上直前にYさんの腰の故障が出たが、幸いに多少の配慮で以後も歩き通せた。せっかくの北海道最高峰だが展望はやはりナシ。山頂からキバナシャクナゲの咲く道を少し下ると、次は雪の大斜面の下り。登山口に地図とコンパス必携とあったが、視界2、3百米となりトレースもしっかり見えて無事通過した。

 この後熊ヶ岳の登りまで見事なお花畑が続いて、悪天候ながら、「来てよかった」とみんな感激。2日目のコースも含め、大雪山ではイワウメの群落が至る所で目につく。

 間宮岳以降は御鉢平の西から北の縁を行く尾根歩きで、雄大な展望が楽しめる所だろうが、御鉢平も1、2回、薄れたガスの間にチラッと見えただけ。悪天候で行程も長く、お茶を沸かそうという気にはならず、朝食、昼食は各自休憩時に適宜取った。途中の北鎮岳往復は、残念がるYさんの声もあったが割愛。ちょっと怖い雪の斜面、可憐な花々などを楽しみながら、御鉢の縁から雲の平へと下る頃には視界がかなり開け、曇り空もやや明るくなって、今宵の宿、黒岳石室への歩調も軽くなった。

 2時25分石室着。天候のあまり良くない中の1日の行程を終えてホッとしつつ、この日初めてお茶を沸かしてくつろぎ、今晩から明日の食事の準備もした。今回の我々の食事はお湯を注ぐだけの各種のアルファ米の携帯食で、事前の北八ヶ岳山行での試食をもとに各自が用意してきている。まだ時間も早いので5人は黒岳山頂を往復してきた。石室は食事は自炊で、寝袋、毛布は予約で借りられる。寝起きする建物は何十年も使い続けている古い山小屋であるが、トイレは最新のバイオトイレで一番立派な建物となっていた。外国人入山者も多くなっているようで、同宿の子供連れの台湾人のお喋りが少しうるさかった。石室の管理人、お年寄りや女性には親切そう。
                                       (ここまで新井記)

7月8日(金)
 黒岳石室3:55−北海岳(2249m)6:20/6:30−白雲山分岐7:59−白雲山(高野八木は分岐に停滞)−小泉岳9:45−赤岳10:13/10:45−銀仙台2:30−層雲峡温泉(層雲峡観光ホテル 泊)
  天気予報によると、第3日目の7月8日は晴れるはずでしたが、とうとう最後まで投句まで望める天気には恵まれずに終わってしまいました。雲がかかったかと思うとサッと降ってくる、かと思うと陽が気まぐれに顔を出すといった調子でした。
 しかし、景観には恵まれなかったけれど、花だけは天気に関係なく、私たちを迎えてくれました。高山のお花畑の話はよく聞かされてきましたが、一面に咲き誇る花々の景色を見るのは、私が山歩きを始めて以来、はじめての経験でした。花の名前はもう覚えていませんが、それについては高橋さんが報告してくれることになっています。
 今回の山行の構成は、男4名、女3名の計7名で、CLは山崎さん、SLは吉田さんでしたが、年齢は70才代4名、60才代3名といった、全く高年齢の一行でした。
 しかも、その中で最高齢は76歳の私(高野)が相変わらずのペースメーカーですから、この大雪山系を歩き抜けるか心配でした。
 2日目の旭岳から黒岳石室までの行程は、途中悪天候のため北鎮岳をカットして3時頃には石室に到着できました(行動時間は9時間30分)。3日目の銀仙台は3時30分の予定が1時間も早く到着することができました(行動時間約10時間30分)。
 この2日間、大雪山系を無事歩き通せたのは、一つは、この企画をされた吉田さんの一行の力量を見極めた上での綿密な山行計画のおかげです。そして、二つ目に、最初の旭岳登頂に際して、CLの山崎さんから、「歩幅を小さく、ゆっくり登ること」という適切な指示があったことです。いつもの日帰り山行と違って、重いリュックを背負っての登りですから、私は、この一言でとっても気が楽になり、私の呼吸に合わせて、リズム感よく歩き通すことができました。
 今年の冬は、雪が多かったせいか、3日目の行程のほぼ1/3は雪渓歩きでした。おかでさまで、足への下りの衝撃が少なく助かりましたが、思わぬ事に、下山した帽子を脱いだら、目からしたが真っ赤に陽焼けしてしまいました。陽が照っていないので油断した結果がこれでした。雪の中の紫外線の強さに、来してからも唇まで腫れあがってしまいました。
 胃袋の中が空っぽになるなんて、戦争戦後の食糧難時代以来の経験でした。2日目の石室での夕食は、午後6時頃、乾燥食品の1袋をお湯で戻して食べました。ところが夜中に腹が減り始め、ついに3時頃菓子パンを一つほおばってしのぎました。
 翌朝、3時55分に出発して、最初の休憩で朝食となり、前泊の湧駒荘で作ってもらった握り飯で朝食としましたが、どうしても胃袋が受け付けず、2/3ほど食べてやめてしまいました。北海岳を過ぎ、白雲岳分岐に付く頃には、胃の中が空っぽになってしまい、後が続かないのではないかと思い、皆が白雲岳にいっている間、分岐に留まり、腹ごしらえをすることにしてもらいました。
 夕べの夜中のすきま風の寒気で、寝不足がたたったのか、握り飯そのものがだめなのか?ともかく胃袋が空っぽになるなどという経験は山歩きで初めてでした。  

7月9日(土)
 宿8:00(タクシー)− 大雪ダム 大函小函 双瀑展望台(銀河の滝、流星の滝) ビジターセンター 大雪アンガス牧場 熊牧場 −旭川空港 ― 羽田空港4:45着
                                            (以上 高野記)



花の大雪山                                 (高橋武子記)

7月6日
 宿から旭岳ビジターセンター、ロープウェイ駅まで散策。
 炉端にはコウリンタンポポが朱色の花を付け、ウコンウツギ、ムラサキヤシオツツジも咲く。ビジターセンターで大雪山固有の植物などの下調べをする。ジンヨウキスミレ、ホソバウルップソウ、エゾオヤマノエンドウ、メアカンキンバイはこの後、山中で実物に会えた。今年は雪が多く残っているとのこと。

7月7日
ロープウェイが順調に動き、一気に標高1600m、6℃、小雨の中となる。雪の消えたすぐ後に咲くショウジョウバカマがまずお出迎え、そしてエゾノコザクラ、エゾツガザクラ、アオノツガザクラ、キバナシャクナゲ、ミナズオウの咲く中を登る。やがて、イワウメが咲き出す。小さな葉をびっしり敷きつめ、その中から細い花柄が立ち上がり、五弁の白花が上を向いて咲いている。
 金小岩付近では霧の流れる緑したたる中にキバナシャクナゲとイワウメが浮き立ち感激!! 旭岳のガレ場では目を凝らしてコマクサを探すが見つからず。メアカンキンバイが咲く。葉は元々白っぽい露を含んで銀緑色に見え、黄色の花びらは透き通るよう。ミヤマキンバイも咲くもののメアカンキンバイの方が断然多く、趣もある。
 旭岳を下ると後は雪渓とお花畑の世界。チングルマも咲きだしハクサンイチゲも咲く。特にイワウメとキバナシャクナゲは多く、どこまでも広がって咲く中、ミネズオウやコゴメツガザクラが根元を埋め、エゾノコザクラやエゾツガザクラ、メアカンキンバイが彩りを添えている。歩いても歩いてもお花畑。朝、旭岳の金小岩付近で感激してしまったのが、早まった感じ。花の量たるや豪快。
 やがて、エゾオヤマノリンドウが咲きだし、ミヤマタネツケバナ、クモマユキノシタが咲く。数は少なかったが、チシマクモマグサもすっきりとした姿を見せてくれた。タカネスミレも真っ黄色に群落を作っているところがある。株も大きい。
 雲ノ平からは快適な草原。イワヒゲが小さな鈴の様な白い花を付け、いよいよコマクサが現れる。コマクサの花の色はとても濃い。やがて今日の泊まりの黒岳石室に到着。お花畑に囲まれて眠る。夜中に雲が切れ、満天の星。今日は、七夕。天の川を挟んで織り姫と牽牛がまたたきあっていた。大きな流れ星が一つ流れた。

7月8日
 朝、霧の中、間近でノゴマがピンクののどを見せ囀る。昨日はイワヒゲが多かったが、今日はジムカデの方が多く、これも小さな白い鈴の様な花がかわいらしい。ヒメエゾツツジは小花が集まってほゎっとした感じがこれもかわいい。北海岳では、砂礫にクモマユキノシタがけなげに咲いていた。イワブクロは今まで蕾しかなかったかやっと花が開いている。雪渓を超えてはお花畑。今日もこれでもかというほど花を付けて広がっている。
 小泉岳ではホソバウルップソウがすがすがしい薄紫色の花穂をのばす。少ないがチョウノスケソウも見つける。駒草平ではコマクサ、チシマキンレイカが咲く。そして、少し下ったところではジンヨウキスミレが咲く。大きな雪渓をすぎるとエゾイソツツジの群落があり小休止。やがて木立が高くなり銀泉台に到着。花、花、花の山行でした。

他に咲いていた花
エゾイチゲ、ミツバオウレン、ゴゼンタチバナ、ユツバシオガマ、キバナシオガマ、ハクサンチドリ、エゾイワツメクサ、エゾタカネツメクサ、コケモモ、クルマメノキ、マルバシモツケ、サビバナナカマド