国内山行記録    熊谷トレッキング同人

錦秋の飯豊連峰縦走

山域山名:飯豊連峰(山形県、新潟県)
期  日:2007年10月6日(土)〜8日(月)
参 加 者:CL宮田 SL木村 駒崎、宮内、栗原昌(計5名)

行動記録:
10/5(金)
移動
 羽生木村邸(19:00)=羽生IC=会津若松IC(22:00宮内UP)=飯豊山荘(25:00/25:30就寝)

 午後8時頃、宮田先輩から佐野ICとの電話あり。塩川のセブンイレブンで食料調達。大峠を越え、川西町、国道113号経由で飯豊山荘へ。飯豊山荘には7,8台の車あり。連休の割りに少ないか。満天の星空。テントを張り、ビールを軽く飲んで就寝。

10/6(土)
:行動時間9時間45分、累積標高差+1800m/-350m、消費カロリー3300kcal
 飯豊山荘410m(6:03)→温身平450m(6:28/36)→梅花皮沢左岸620m(7:35/7:45)
 →梶川出合720m(8:25/8:45)→石転び沢出合850m(9:25/9:36)
 →石転び沢雪渓下1050m(10:34/10:47)→本石転び沢出合1230m(11:37/昼食/12:10)
 →北股沢黒滝下1550m(13:13/13:25)→梅花皮小屋1850m(14:20/テント設営/14:58)
 →北股岳2025m(15:18/15:40)→梅花皮小屋1850m(16:00)


    
<天候;晴れ時々曇り>
 皆寝不足気味。温身平までは林道歩き。自然観察の案内板があちこちにある。温身平からは今日の目的地の梅花皮小屋や北股岳を遠望する。あそこまで行くと思うと気合が入る。何年ぶりかの重荷を背負った山行である。

 単独行の熟練の地元の人と思しき登山者が非常に速いペースで我々を追い抜いていく。その後、2名の写真撮影目的と思しき登山者と抜きつ抜かれつしていく。彼らは雪渓の手前で引き返していった。他に石転び沢を登った登山者はないようであった。途中(7:25)、藪の中から甲高い「クワァ」という音があり、その後すぐに「ドドゥ、ドドゥ」という重低音が響く。おそらく、親子連れの動物の危険範囲内に我々が入ってしまい、親が威嚇音を発したのだろう。音の様子からすると、比較的大きな動物と思われる。あるいは熊か?重低音は、一定のリズムで続いており、休憩を取ろうと思っていたが、慌ててその場所から離れる。我々が歩き出してからもしばらく、その音が響いていた。

 梶川出合への下り坂で(8:20)、宮田先輩が登山道にオオクワガタを発見。しかも雄雌のつがいである。朝の散歩の途中だったのであろうか。オオクワガタはクワガタの中でも稀少性が高く、敏感であるためめったに見つけることはできない。オスの体長は6〜7センチくらい。街中では養殖されたオオクワガタを数千円で売っているが、天然もののオオクワガタは何万円とするだろう。しばらく撮影会をし、そっと登山道脇の藪に返してやった。

 石転び沢出合までは、地図どおりの梅花皮沢の左岸の登山道を行く。結構アップダウンがあり、時間がかかる。積雪時期であれば、スキーで平らな沢の上を歩けるのに、と思いながら歩く。下から眺めると、門内沢や石転び沢は、スキーの斜面としては快適そうだ。「石転び沢の出合あたりにベースキャンプを張って、いくつかの沢を滑るといいな」などと話しながら進む。石転び沢出合から先は、沢の流れ沿いに右岸を進む。昭文社の地図には「背の高い草の中に踏み跡程度の道がある」となっているが、一部そのような場所もあったものの、道は判然としなかった。土や小枝が混じった土石流の跡もいくつかあり、大雨時は融けた残雪とあいまって鉄砲水が発生しているのであろうと思われる。荒天時にはこの道は避けたほうがよいだろう。

 標高1000mくらいの、昭文社地図で「この辺りから傾斜が次第に急になる」と記載されている場所の下あたりで休憩をとる。この先、沢には雪渓が残っており、行く手を阻んでいる。雪渓は、何回も融解・凍結を繰り返して表面は凍ってツルツルで、崩れている部分もあり、その上を歩くことはできない。長さは200〜300メートルくらい。左岸に渡り、雪渓の際のガレ場を行く。斜面は浮石が多く不安定で、すぐに崩壊する。宮田先輩から、「このような場所はトラバースしたくなるが、たいてい事故はトラバースしている途中の足場が不安定な場所で起こる。なるべく直登するように。」との指示があり、宮田先輩自らが先頭に立ち、メンバー間の距離を開けて緊張しながら進む。雪渓を通り過ぎてようやくほん石転び沢の出合に着いたときは、正直ホッとした。

 ほん石転び沢出合からは、傾斜は少し緩くなる。一箇所、雪渓が残っていたが沢の中を通れた。依然として足元は不安定、上部からの落石にも注意しながら進む。先頭を行く木村さんが、ずり落ちてきた上半身大の岩を危うく避けたが、足を少しかすったようであった。黒滝手前で、単独下山中の軽装の初老の男性が「この先は大丈夫か。」と聞いてきたが、正直、今の時期のこのルートは薦められない。秋の日暮れは早く、斜面に手こずっている間に日が落ちてしまう可能性もある。「斜面が崩壊して危険ですよ。」と答える。その男性は少し逡巡したようであるが、そのまま下っていってしまった。無事の下山を祈る。

 黒滝付近から夏道が再び現れる。急登で確実に高度は稼げるが、いかんせん慣れない重荷で歩調は遅い。梅花皮小屋は間近に見えるが、一向に距離は縮まらない。いいかげんうんざりしてきた頃、ようやく小屋に到着した。連休中は小屋には管理人も入っており、管理人の指示で小屋の北側にテントを張る。一張500円。隣にはもう一張のテント組。

 少し休んで、空身で北股岳山頂へ。重荷から開放され足も軽い。山頂はガスがかかったり晴れたりで、ガスの切れ間から登ってきた石転び沢や二王子岳を望む。太陽がちょうど背になり、ブロッケンも見られた。ビールで乾杯、山頂でゆっくりしてテン場へ戻る。小屋の少し上では、携帯(au)の電波も入り、メールも見られた。この後も、飯豊の主稜線上では、比較的auの携帯は使えた。

 テン場ではいつもの酒盛り。これが楽しくて山に登るのだ。頑張って背負ってきたビールがうまい。紅葉にはまだ早かったようだが、空も皆の顔も赤く染まる。明日の天気はよさそうだ。いい気持ちになって、シュラフにもぐりこんだ。     (10/5,6 宮内記)

10/7(日)
行動時間10時間30分、累積標高差+1100m/-1200m、消費カロリー3100kcal
 梅花皮小屋1850m(5:00)→梅花皮岳2000m(5:25/ご来光/5:50)→烏帽子岳2018m(6:10)
 →御手洗の池手前1860m(6:45/7:00)→天狗の庭1790m(7:40/7:45)
 →天狗岳1979m(8:20)→御西小屋2000m(8:35/8:50)→大日岳2128m(9:50/10:20)
 →御西小屋2000m(11:10/12:00)→駒形山2038m(12:55)→飯豊本山2105m(13:15/13:30)
 →本山小屋2100m(13:50/14:00)→草履塚1908m(14:55/15:10)→切合小屋1750m(15:30)

<天候;晴れ時々曇り>
 3時起床。特別寒くも無く、よく眠れたがまだ少し眠い。今日は行動時間が長いので早起き。ぼんやりした頭で朝食の支度をする。当初の計画では今日は御西小屋までで楽勝な1日のはずだった。しかし山行直前に計画変更。寒冷前線の影響で明日から山は大荒れが確実、そんな天候の中、難所とされる大クラ尾根を下るのは論外、稜線に留まることすら危険なので御西小屋泊もキャンセル、今日切合小屋まで行き、翌日は樹林帯で比較的安全な地蔵岳経由で大日杉小屋に下山するルートに計画変更した。朝食をとり、テントを撤収する。5:00出発。

 小屋からすぐなだらかな登りが始まる。150m登って梅花皮岳山頂に到着。ここで日の出を待つ。東の空は赤く染まり始め、ヘッドランプはもう必要ない。大展望の彼方から太陽がゆっくりと姿を現した。他の人は写真を撮りまくっているが、自分は今回カメラを持ってこなかったので代わりにその光景を目に焼き付ける。日本海まで見通せる絶景にしばし見とれる。満足したところで先を急ぐ。

 御西小屋までの稜線は平坦な道と緩いアップダウンの繰返しで、道程展望はよく快適な散歩を楽しむ。紅葉はこの辺りパラパラっと染まっているだけで今いち。遠くに見える大日岳とその稜線はぼんやりと赤く染まっているのが見えるのであちらは期待できそうだ。稜線北東側は雪が積もると良さそうな沢ばかりで、滑走ラインを想像しながら歩く。途中よい区切りとなる池が2,3箇所ある。天狗の庭で2回目の小休止の後、150m登るとそこには素晴らしい景色が待っていた。飯豊本山北側からの大斜面!500mはあるだろうか。それが稜線いっぱい続いている。見ているだけでドキドキする景色だ。これは滑りにこなくては! 小休止の直後だったが、写真タイムとなった。

 10分後御西小屋に到着。ここまで3時間半。予定通りのペースだ。小休止の後、ここにザックをデポして大日岳を往復する。やはりこちらの稜線は紅葉が素晴らしい。特に文平の池から大日岳を望む景色はよかった。カメラを持って来なかったことを少し後悔する。

 山頂直下の200mの急登は堪えたが、小屋からちょうど1時間で大日岳山頂着。ガスも晴れてきて、ここも大展望を楽しめた。帰りにもう一度文平の池から大日岳を望む。堂々とした山容で、こちらの方が飯豊の主峰にふさわしいように思う。小屋に戻って昼食タイム。宮内氏が疲れた体に鞭打って、45m下の水場から水を汲んできた。どうもお疲れ様です!2日前に買った潰れたパンと、コーヒーで昼食をとる。

 12時ちょうどに出発。本山までの稜線はなだらかな金色の野原だ。斜面はところどころ彩り、こちら側はまさに錦秋といった感じだった。やはり山歩きは秋に限る。ゆったりと至福の時間が過ぎる。御西岳、駒形山を経て1時間ちょいで本山山頂に到着。当初の予定だった大クラ尾根が北に伸びている。ギザギザの痩せ尾根で手ごわそうだ。ここからだと登山道は確認できない。あまり人も通らないのでルートも不明瞭だろう。確かにここを暴風の中、通りたくはない。記念写真を撮った後、本山小屋の方へ移動する。神社に御参りして小休止。

 この先はとたんに人が多くなってきた。本山だけを往復する人が多いのだろう。この分だと切合小屋は混雑しそうだ。が、本山南面には今回一番の紅葉があった。熊笹の緑の絨毯の中に赤や黄が鮮やかに色づいていた。どうやら紅葉はこの辺りが一番良さそうだ。ここでもしばし写真タイムとなる。

 今日最後の登り100mほどのあと、ふたこぶの草履塚で小休止し、15分ほど下って15時半に無事切合小屋に到着。小屋は既に混雑している。何とか2階に5人分のスペースを作った後、酒と食事を持ってテン場に脱出。100mほど離れた水場で水を汲んできて、夕暮れの中寒さに震えながら乾杯。今日を労った。いい気分になったあと夕食を済ませ、小屋に戻る頃にはもうすっかり暗くなっていた。小屋も来た時以上には混んでおらず、ほっとする。お茶を沸かした後、早々に眠り支度する。19時就寝。

10/8(月)
行動時間3時間30分、累積標高差+150m/-1300m、消費カロリー900kcal
 切合小屋1750m(6:10)→御沢分れ1550m(6:45)→地蔵岳鞍部1430m(7:40/7:50)
 →地蔵岳1538m(8:05)→御田手前1000m(8:55/9:05)→大日杉小屋600m(9:40/10:50)
 =タクシー=飯豊山荘(12:10)=温泉&小国新蕎麦=磐梯河東IC(16:25)

<天候;雨>
 4時起床。人の熱気のせいか暑くて途中シュラフを脱いで寝ていた。雨風の音が聞こえる。目覚めの一服ついでに外の様子を見に行く。小雨。西風5mくらいか。ときおり突風が吹いている。気温は高め。やはり予想通り荒れるようだ。山頂へ日の出を見に行こうとしている人たちも、撤退の相談をしている。

 小屋に戻ってコーヒーを飲み、ゆっくりと朝食をとる。今日は長くても5時間で下山できる。そうあわてる必要もないが、天候は恐らく後になればなるほど悪くなるだろう。となれば早く出るに越したことは無い。朝食後カッパを着てザックにカバーをかける。6時10分に出発。

 雨風は明らかに強くなっており時折、風に体を持っていかれそうになる。この様子だと稜線はえらいことになっているだろう。足場の悪い道を慎重に歩いて、樹林帯を目指す。30分後、御沢分れ前後から木が多くなってきて風を凌げるようになる。多少のアップダウンの後、平坦な狭い尾根道を黙々と歩く。地蔵岳の登りに差し掛かる直前で、ようやく離合できるくらいの僅かなスペースがあり、そこで小休止。わき目も振らず黙々と歩いたせいかコースタイムよりも1時間も早い。10分休憩のあと出発。100mほどの登りを15分かかって、8時過ぎに地蔵岳に到着。ここでタクシー会社に電話を入れ、1時間早めて11時に来て貰うよう頼む。

 ここから先は延々と下りだ。木の根が張り出してただでさえ歩きにくい上濡れている為、時々滑ってこけそうになる。ただ標高はどんどん下がっているので、その分雨風は弱くなって、さらにブナの樹林帯の中なのでもうほとんど気にならないくらいだ。途中高校生の集団とすれ違ったが、この天気の中登るのだろうか。忘れられない思い出になるだろう。嫌になるくらい下った後、1000m付近で10分小休止。さあ、あとひとふん張りだ。さらにこれでもかと下る。最後に高さ20mぐらいの嫌らしい鎖場を過ぎて間もなく小屋が見えた。天気も小康状態で雨は上がっている。9時40分に大日杉小屋到着。

 小屋の1階テラスで乾いた服に着替える。その後2階入り口から小屋の中に入り、タクシーが来るまでお茶を沸かして残った行動食と昼食を食べる。真新しい小屋でトイレ、シャワーもついており快適だ。休憩料は一人150円。囲炉裏でしばし談笑の後、11時少し前にタクシーが来る。タクシーも足を伸ばせてまた快適だった。

 1時間半で車のある飯豊山荘に到着。雨脚が強まり風も北向きに変わっていた。大急ぎで車に乗り込み、近くにある梅花皮荘で温泉に入る。3日分の汗を流してさっぱり。その後タクシーの運ちゃんに聞いた小国の蕎麦屋「丸武」で食事。運よくこの日から新蕎麦ということで、おいしい蕎麦を食べてようやく下界に下りてきたことを実感する。

 帰り道は会津若松まで下道。宮内氏と別れた後、高速に乗る。8時ごろに木村邸着。宮内氏の奥さんに頂いたさんまをもらって自宅へ帰る。秋を満喫できた山行でした。やっぱり山歩きは秋にかぎるなあ。                  (10/7,8 栗原昌記)