国内山行記録    熊谷トレッキング同人

キタダケソウ観察山行・南アルプス、北岳
山域山名:北岳(山梨県)
期  日:2007年6月30日(土)〜7月1日(日)
参 加 者:CL宮田 SL木村 逸見、駒崎、浅古(計5名)
行動記録:
6/29 前夜発。東松山(21:00)→双葉SA(22:45)→道の駅しらね(23:10)
 八王子まで延伸開通したばかりの圏央道を快適に走り抜け、東松山から2時間余りで道の駅しらねに到着。駐車場の片隅にテントを張り、明日に備える。

6/30 道の駅(6:30)→芦安P(6:50/7:40)→広河原(8:45)…南アルプス開山祭(10:00/12:00)…
 広河原山荘(12:20)→大樺沢登山道分岐地点(12:40/12:50)→休憩(13:20/13:25)→
 休憩(14:00/14:10)→休憩(14:30/14:40)→白根御池小屋(15:10)

 県営林道南アルプス線のマイカー通行規制のため、芦安の無料駐車場に車を置いてバスに乗り換える。バス停には、開山を待ちわびた多くの登山者が列を作っていた。テレビカメラもバスに乗り込む登山者の姿を映している。

 広河原では「2007年南アルプス開山祭」に参加。南アルプス市長のあいさつに始まり、来賓として山梨県知事のあいさつ、地元中学生による合唱、夜叉神太鼓の演奏など盛りだくさんの内容であった。「蔓払い」では、100年前のいでたちの案内人により、束ねられた蔓を斧で切り開く儀式が行われた。我々も、登山の安全を願い蔓の門を通り抜けた。昼食は、開山祭の主催者の振舞いがあり、そば(山菜天ぷら付き)、おにぎり、食後のフルーツに桃を頂戴した。

 今回の我々の山行は、地元山岳会が主催する「キタダケソウ観察会」に完全に溶け込んでの参加である。実務を担うNPO法人「芦安ファンクラブ」のスタッフが、応募により各地から集まった登山者28名を統率していく。広河原山荘前で簡単なオリエンテーションをした後、出発する。スタッフを含めると40人の大隊となり、我が同人ではこんなに大勢で歩くことはない。瞬時に判断し、トップに近い位置を確保する。天候は雲が多めの晴れ。暑くもなく、じめっとしている訳でもない絶好のコンディション。先導者のペースに合わせて急登を歩き標高を稼ぐ。途中4回の休憩を取り、登山道の斜度が緩やかになった後に30分ほど歩くと白根御池小屋に到着した。

 本日の行程はここまで。部屋の指定を受け、少し体を休めた後、小屋前の広場でビールを飲みながら、くつろぎのひとときを過ごす。歓迎イベントとして「餅つき」が行われ、登山者に振舞われた。今日はタダで食ってばかりいる。

 小屋は改築されて年数が浅いこともあり、清潔感たっぷりでした。どこの山小屋でも、灯りがあっても薄暗い印象がありますが、この山小屋の照明は非常に明るい。床は滑るようにツルツルだし、トイレは水洗。食事もおいしく、快適な小屋でした。

7/1 白根御池小屋(5:30)→雪渓(5:55/6:10)→休憩(6:25/6:30)→雪渓上部(7:50/8:10)→
 八本歯のコル(8:35/8:50)→キタダケソウ観察(9:20/10:00)→
 稜線(北岳山荘方面との分岐)(10:20)→北岳山頂(10:27/11:15)→
 肩の小屋(11:47/11:57)→休憩(13:05/13:10)→御池小屋(13:55/14:15)→休憩(15:00)→
 休憩(15:35/15:45)→広河原山荘(16:40)

 出発時の天候は曇りでガスっている。天候の好転を願って歩き始める。今日は全体を3班に編成して、班毎の行動となる。我々の班をリードするのは宮下さん。60歳はとっくに過ぎていると思われるが、色黒で細身にしてパワフル。この山域を熟知しているので頼もしい。雪渓までは地図上の等高線に沿った水平道を行く。30分弱で大樺沢の雪渓に到着。アイゼンを装着する。登山靴越しに雪の感触を確かめながら直登していく。落石の危険があり、全員が安全に休憩できる斜面がないため、階段の取り付き手前までゆっくりとしたペースで標高を稼ぐ。

 アイゼンを外した後は階段を登っていく。登りきったところで八本歯のコルに到着。スタッフの話ではキタダケソウの群落までまだ30分は歩くとのこと。再びザックを背負い歩みを進める。北岳山荘への分岐点(巻き道)にザックをデポし、いよいよキタダケソウとご対面となる。身軽になってカメラだけを持っていく。今年は残雪が多いということで、開花の状況が心配されたが、例年通りの開花でちょうど見頃であった。観察中にガスも切れ、間ノ岳、富士山も姿を現した。前日に滑落してビバークした登山者の黄色いテントが斜面に見える。救助のヘリも飛んできて、救助の一部始終を見た。

 存分にキタダケソウをカメラに収めた後、デポ地点まで戻る。キタダケソウの観察が主目的で、当初の計画ではここから引き返して下山の予定であった。しかし、全体的に予定時間よりも早く行動していること、天候も良好であることから、リーダーの判断により山頂を経由して下山することになった。

 山頂に向けての急登をゆっくりとしたペースで歩き続ける。ほどなくして山頂に到着。個人的には、高校1年生の時に山岳部の夏合宿で登頂して以来、十数年振り2度目の北岳山頂であった。当時は景色を堪能する余裕がありませんでしたが、今回は気持ちに余裕を持って山頂でのひとときを楽しみました。広河原までの所要時間を逆算すると、のんびりとしていることもできないので、実際のところは慌ただしく昼食をとり下山を開始。

 我々は今日もリーダー宮下さんのすぐ後ろの位置を確保して歩いた。女性陣は登山道沿いに咲く高山植物を見つけては、リーダーを質問攻めにした。この山を熟知した宮下さんは、花の名前を即答してくれる。ほかにも、希少高山植物のことや、近年の傾向、この山域のことなど貴重なお話を伺うことができた。専属のガイドと伴に山歩きをしているようなもので、めったにない機会であった。

 草すべり経由で御池小屋まで戻ったのが2時。主催者は、この時点で広河原からの最終バス(4時発)には間に合わないと判断。芦安組と甲府組とに分かれて、乗合タクシーを手配してくれた。あとは昨日登ってきた道を戻るのみ。行程全体を通じて、歩行速度はゆっくりめで、休憩を短めにしていた。参加者全体の力量を考慮してのペース配分である。16時40分に広河原へ到着。なんと今日の行動時間は11時間。よく歩いたものだ。林道のゲートが時間で閉まってしまうため、反省会も割愛して慌ただしく乗合タクシーに乗り込み、スタッフの見送りを受けて広河原を後にした。

 梅雨真っ只中のこの時期に雨にも降られず、念願のキタダケソウは見たし、計画にはなかった北岳のピークも踏んだし、非常に満足の行く内容でした。これは、この山行を企画立案し、細部まで行き届いた配慮をしてくださった芦安ファンクラブのスタッフのおかげだと思います。この場を借りてお礼と感謝の気持ちを表したいと思います。

 8月10日追記 芦安ファンクラブの事務局から、北岳山頂で撮っていただいた集合写真(2Lに引き伸ばし、キタダケソウ観察会と印刷されたもの)が自宅に届きました。
(浅古記)


『キタダケソウ観察山行の感想』
 (逸見記)

 キタダケソウに逢えました。長いことキタダケソウが見たいと思い続けていた。今回、南アルプス市の「キタダケソウ観察会」に参加することで夢が実現できた。日ごろのトレーニング不足で、ゼーゼー・ハーハーいいながら大樺沢の雪渓やいくつもの梯子を登ったが、憧れのキタダケソウに逢えてとてもうれしかった。まして、予定外の山頂にも立つことができた。同行してもらった皆さんには、いろいろと気遣っていただいた。おかげで念願が叶った。本当にありがとうございました。

逢えた花;
 キタダケソウ、クリンソウ、マイズルソウ、カラマツソウ、ギンリョウソウ、イチョウラン、キソチドリ、ツバメオモト、ミヤマハンショウズル、ゴゼンタチバナ、ズダヤクシュ、エンレイソウ、ニリンソウ、タケシマラン、バイケイソウ、ハリブキ、ミヤマキンバイ、オヤマノエンドウ、キバナノコマノツメ、チョウノスケソウ、ハクサンイチゲ、イワベンケイソウ、ショウジョウバカマ、サンリンソウ、サンカヨウ、コイワカガミ、チシマアマナ、ヤマハタザオ、ミヤマダイコンソウ、キバナシャクナゲ、イワウメ、ミネザクラ、ミヤマナナカマド