国内山行記録    熊谷トレッキング同人

個人山行報告
北日高縦走

山域山名:北日高・伏見岳、ピパイロ岳、北戸蔦別岳、幌尻岳(北海道)
報 告 者:南雲(単独)
期  日:2007年7月27日〜29日

行動記録:
 当初は、7月13日からの4日間を予定していたが、事情があり、7月27日からの3日行程、予備日1日に変更。事前の天気予想は変転したが、最終的には、縦走のメインの2日目に低気圧が来る予想となる。
7/27 伏見岳避難小屋1125-1415伏見岳1445-1555水場のコル・幕営
7/28 水場のコル555-705ピパイロ岳710-815幕営のコル・水あり840-920・
 1967m峰925-1025・1856m峰1035-1120北戸蔦別岳1145-1245戸蔦別岳1250-
 1330七つ沼・幕営
7/29 七つ沼530-720幌尻岳740-940幌尻山荘955-1110取水口1115-1255登山口

<1日目>
27日早朝便で帯広空港へ。タクシーで伏見岳登山口へ。天気晴れ。登山口の登山ポストをみると、伏見岳往復の3人と、ピパイロ岳往復の2人が入山している。今日の幕営地は水場がコルから30分下るということなので、登山口で水を4リットル詰める。樹林帯の中の急登が続く。帯広平野が眼下に広がり展望はいい。岳樺の白い樹皮が目に映える。睡眠不足にはなかなかきつい。約3時間で伏見岳に。頂上直下はお花畑もある。

 頂上からは、360度の展望。3年前に登った十勝幌尻、カムイエクウチカウシも見える。札内岳、エサマオントッタベツ、カムイ岳、幌尻、戸蔦別、北戸蔦別岳、ピパイロ岳がすべて見える。北日高の芽室岳方面も見えるが、どれか判然としない。ここで、ピパイロ往復の夫婦と会う。

 ピパイロへの縦走路は、樹林の中のアップダウンを繰り返しながら続く道で、地形図で見た感覚以上に疲れる。「日高の1級国道」と言われているルートだが、藪こぎのような道が続く。1462mの水場のコルにつくが、何の表示もないので、さらに先かと思い念のために、5分ほど進むが、登りにかかってしまうので、引き返し幕営。稜線上と、一段下の二か所に幕営可能であったが、雨を考え、稜線上に幕営。周囲は岳樺の林。誰もいない。

 今回初めて使う一人用シェルターを張る。天気予報では夜から低気圧が接近し、雨とのこと。雨対策をして、6時には就寝。

<2日目>
夜中から激しい雨。雷鳴も轟く。風で周囲の岳樺が大きな音を立てているが、シェルターは比較的快適。4時半に起床。簡単な朝食。昨日、水を節約し過ぎて喉が渇いたが、残りの水が相当あるので、喉をうるおす。それなりの雨の中、完全装備をしてから、シェルターから出る。ピパイロの登りは400m。当初は樹林の中であるが、1800mくらいからは森林限界を超え、お花畑も広がる。しかし、激しい雨と強い風でとにかく寒い。

 山頂からは、北西ピークに向かって横長の山稜がつづく。時々、風によろけながら歩くが、冬山のことを考えればこの程度は大丈夫と考える。北西ピークからは、分水嶺となる日高山脈の主稜線に乗る。右に日高、左に十勝を想像しながら、縦走する。ピパイロからはずっと森林限界を超えており、7月末だが広いお花畑に、高山植物がたくさん咲いている。ガイドでは日高の固有種もあるとのことだが、アルプスで見る高山植物と見分けがつかない。

 天場のコルにつくと、いったん雨があがる。一休み。今日の幕営地の七つ沼カールに水があるか不安なので、水場まで下る。ガイドには近そうなことが書いてあったが標高100m以上も、急な泥の斜面を下らされてしまった。コルから1967m峰へは急登だが、鋭鋒で恰好もいいし、両側の斜面はお花畑が広がる。さすが北海道100名山のひとつと思った。しかし、山頂には、山名示す板切れがぽつんと置いてあるだけ。そこからは、切り立った縦走路が続くが、ところどころに広がるお花畑に目を楽しませる。這い松を漕ぎながらついた1856m峰には、何もない。さらに這い松とお花畑の中を北戸蔦別に。ここでまた雨が降り出す。風をよけ、昼食。

 さらに戸蔦別に縦走するが、幌尻小屋への下降点には分岐を示す表示もない。日高の山は本当に指導標がない。ゆっくり登り、ピラミダルな戸蔦別の山頂へ。ここにも山頂を示す何もない。深いガスの中、吊尾根に下る。七つ沼への下降点は、縦走路がカール側に移った先にあり(表示なし)、ガレ場を約150mほど下る。

 「道内岳人のあこがれの場所」と紹介されていたが、沼が点在し、その周囲に這い松と砂地の天場があり、周囲を幌尻、戸蔦別に囲まれ、山上の楽園という雰囲気。ここで、伏見岳の山頂以来、初めて人に会う。一人用テントで先に幕営していた。

 沼の脇に幕営したが、水は豊富にあった。相変わらず雨が降り続く。天気予報では道内に、大雨洪水警報が出ているなどと不穏な情報。明日は、増水を避けて新冠川のエスケープを使うことも検討した。

 6時に就寝。その後、雨が小ぶりになり、夜の間は雨はやむ。

<3日目>
4時起床。天気は曇り。ガスも晴れて、幌尻が見えた。当初の予定通り、額平川に下ることとする。稜線へは、幌尻側の道を使うが、これもカールの斜面を直登するのでかなりの急登であった。稜線上は這い松の藪こぎ。幌尻の肩につく頃にはガスが晴れる。そこからは、左右の眼下に見えるカールと這い松の斜面を楽しみながら、山頂に。

 七つ沼で一緒だった人もすぐにチロロ川に下山してしまい、一人だけの静かな山頂であった。ここで、携帯を使い、下山のタクシーの予約をしようとしたが、圏外。困った。

 やむなく、少し下山した1900m付近で再度携帯を試す。呼び出したが出ない。沢に下りてしまうと通じなくなるので、やむなく、自宅に伝言を頼もうとかけなおすともう圏外となっている。どうもガスが影響するらしい。しばらくガスが晴れるのを待つが、一向に晴れない。やむなく、下山をする。

 山頂から幌尻山荘まで標高1100m。一気に下る。ここで3パーティほどのツアー登山グループにあう。一気に繁華街に入ったような感じである。道も格段に良くなった。途中に「命の水」という水場があり、期待していたがいつのまにか通り過ぎてしまったのか、気付かずに小屋についた。小屋にも15名ほどのツアー登山客がいた。

 小屋で、タクシーのことを相談したが、無線通信したものの相手が出ないとのこと。定時交信は朝晩7時とのこと。「行けばなんとかなる」という小屋番の声を頼りに下山。渓流靴に履き替えて下るが、水量は予想に反して膝程度。問題にならない水量であり、登山靴でも十分渡れる。久しぶりに沢に入るのは快適であり、徒渉と側壁の登り降りを繰り返し、取水口に。ここで、有名な岩崎某さん率いる10名ほどのグループが昇ってくるのとすれ違う。そこからは、きれいな緑の広がる額平川沿いの林道をひたすら歩く。

 駐車場でぬれた荷物を広げて乾かしてタクシーが上がってくるのを待ったが、2時間経っても来ない。仕方なく、たまたま林道を上ってきたバイクのおじさんに頼んで振内の町の国道まで後ろに乗せてもらって下る。ダートの道で、ザックをしょって後ろに乗るのは怖かった。国道に出て、やっとタクシー会社に電話が通じ、占冠駅から千歳へ。

…全体として…

・北海道100名山のうち、5山の縦走ができた。特に、ピパイロから幌尻まではずっと森林限界を超え、お花畑も広がり、天候にも関わらず楽しめた。

・七つ沼の天場は、静かで連泊したくなるようなところだった。

・予定がどうなるか不安だったので下山のタクシーの予約をしておかなかったが、北海道のような不便なところでは、やはり予約が必要であった。

・一人用シェルターは軽いが、やはり居住性が悪い。特に今回のような悪天の場合はよくない。エスパースか、一人用テントにすべきだった。