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岩手の山旅・秋田駒ヶ岳&岩手山
&姫神山+八幡平

アルバム(秋田駒ヶ岳岩手山八幡平姫神山

山域山名:秋田駒ヶ岳、岩手山、八幡平、姫神山(岩手県)
期  日:2010年6月25日(金)〜27日(日)
参 加 者:宮田(単独)

行動記録:
6/25【秋田駒ヶ岳】
 国見温泉840m(8:15)→横長根1175m(8:52)→横岳1582m(9:54/10:05)→
 阿弥陀池(10:15/10:25)→男女岳1637m(10:37/11:00)→阿弥陀池→
 男岳1623m(11:23/11:45)→横岳鞍部→駒池<ムーミン谷>(12:18/12:35)→
 横長根1364m(13:04)→1175m(13:26)→国見温泉13:58)
<天候:霧のち晴れ>

 自由気ままな一人での東北の山旅は久しぶり、10年ぶりくらいだろうか。木曜日夜9時過ぎに北本を出発。途中三本木SAで2時間の仮眠後、ラジオで岡田ジャパンの試合を気にしつつ北上、勝利の瞬間は前沢SAのTV前で思わずガッツポーズ!。ニュースでも全国大騒ぎのようで、自分も元気を与えられて国見温泉へ。県境の山は寒気の影響で深い霧に包まれていた。

 秋田駒は今年2月と4月に続き、今年3回目である。我ながらよく来るものだと呆れてしまう。緩いブナ樹林帯を約30分で横長根へ、灌木の稜線を行くと駒池分岐から無木立の砂礫帯となり4月にも強風に吹かれた大焼砂。今日も灌木帯の強風からいきなりもの凄い突風に変わり、時々、体が持って行かれそうな感じになる。息をするのも大変なくらいだ。砂礫にはタカネスミレが咲き乱れていた。

 強い風と霧も横岳の頂きに立つ頃から天気も急速に回復し、岩手山も見え大展望を楽しみながら最高峰の男女岳へ。2月に登った吹雪の山頂を思い出す。記念写真を撮った大きな雪の固まりは石積みのケルンだった。滑降時にルートミスした北面の赤倉岳支稜は夏なら何てことない小さな尾根だった。やはり視界が得られないことが多い冬山はやっぱり条件が厳しいと思う。

 阿弥陀池まで下りると平日というのに8合目から来るハイカーがたくさん休んでいた。横岳鞍部から男岳に登って田沢湖を眺める。たざわこスキー場からの夏道は通行止めだった。山頂から見る限りそんなに尾根は切り立っていないが、真冬は雪庇が張り出すので雪稜となるだろう。横岳鞍部に戻って、急斜面を下って火口原の駒池へ向かう。この谷は通称「ムーミン谷」と呼ばれるところで、チングルマの大群落の中からムーミンが出てきそうな花と池塘と残雪の別天地だった。のんびり歩いて何度も休みながら景色を楽しむ。駒池の木道は雪解けで水没していた。

 小岳の縁を水平に巻いていくと横長根分岐に出る。足下には巨大なカルデラ地形が拡がっている。学術的は秋田駒には3つのカルデラがあって、眼下のカルデラは13000年前に形成された南部カルデラと呼ばれるらしい。残りの二つは焼森南縁部から横岳を経て男岳北壁に続き阿弥陀池と湿地帯となる火口(9000年前の北部第1馬蹄形火口)と男女岳東縁の8合目にかけて開けた火口(4000年前の北部第2馬蹄形火口)があるが、南部カルデラはとてつもなく大きい。春に女岳山頂からこのカルデラにある姿見ノ池まで滑降できたらきっと素晴らしい1本になるだろう。

 横長根の分岐から樹林帯を下れば、緑色の湯が沸く国見温泉まであとわずかであった。


6/26【岩手山】【八幡平】
 焼走570m(4:55)→第1噴出口1251m(6:18)→ツルハシ分れ1450m(6:50)→
 平笠不動避難小屋1770m(7:43)→岩手山2038m(8:23/8:50)→お鉢巡り→
 平笠不動避難小屋(10:05/10:15)〜焼走(12:15)
 八幡平アスピーテラインP(16:10)→八幡平山頂(16:40)→八幡沼→見返峠→P(18:00)
 <天候:晴れ>

 翌日はまだ未登の岩手山へ、早朝5時に焼走を出発。この日は盛岡でも33℃の猛暑で朝から脱水になりそうなくらい暑い。第1噴火口からは森林限界のちょっと上を沿うように行くようになって風が心地良い。歩きづらい砂礫の水平道の辺り一面はコマクサが斜面を覆い尽くしていた。おそらく樹林帯境界から標高差5〜600m上部はコマクサばっかりで、こんなすごい大群落はきっと岩手山だけでしょう。まさにドンピシャのタイミングで見事だった。

 ツルハシ分れからはまた見事なシラネアオイ群落を見ながら急登を登る。何度か沢状に残った雪を踏む。山肌から雪が消えた夏に麓から見ると分かりづらいが、ちょっとした起伏があるので吹きだまりになるようだ。小さな祠から50mほど登ると傾斜も緩くなり、背後に大きな岩がある平笠不動避難小屋で、20人位は泊まれそうな立派な小屋だ。

 ここから見上げる岩手山頂は円錐形美しいコニーデ姿だ。御花畑のある火口湖・猪苗代湖への分岐を過ぎると樹林もほとんどなくなり砂礫の道を上るようになる。斜度は幾分緩く30度ほどの斜面が山頂まで続く。冬季はまともに季節風があたるので、雪はほとんどつかないだろう。外輪山から山頂はすぐだった。

 まだ時間は朝8時過ぎ、山頂はさすがに風が強く、長袖シャツを羽織るほど寒かった。独立峰からの眺めは抜群で、残雪輝く秋田駒や和賀岳、船のような八幡平、遠くに連なるのはきっと八甲田連峰だろう。お鉢巡りを歩くと、南側にある八合目避難小屋はまるで営業小屋?というくらいの立派さに驚く。6月半ばから小屋番が常駐するというから、とても混雑する避難小屋なのだろう。

 下山時に多くのハイカーをすれ違った。大きなザックを背負った人は避難小屋泊まりか。焼走ルートは距離は短く短時間で山頂に立てるが、次に夏期に来る時は、西側から鬼ヶ城経由で登って避難小屋に泊まり、下山は池塘と御花畑がある猪苗代湖ルートを下りたいと思った。

 最後の休憩で第1噴火口から見上げる、最後の詰めは40度近いか。条件が良ければ焼走から直登ルートでも行けるが、最後は少し右(北)側に回り込まないと、最後に山頂直下の岩峰群に阻まれてしまう。今春4月18日に山スキーで来たが、埼玉でも雪が積もったほどの異常低温でこの斜面に取り付くことさえ回避したが、春といえどもアイスバーンとなることも多いので、この斜度の登下降はかなり注意が必要だ。低温時は夏道の少し下の樹林帯際に沿ってを登り平笠不動避難小屋へ、あとは山頂を目指すのが妥当なルートだろう。これとは別に、第2噴火口下から南斜面にある八合目避難小屋の樹林帯を目指しても行けそうな気がする。このルートの方が若干斜度も緩く、南斜面なので雪も早く緩む。小屋から山頂までは雪消えが早いかもしれないが、北面も雪が飛ばされる地形なのでスキーを使えない可能性が高い。どうだろうか。

 下山後に焼走の湯に浸かってちょっと時間をつぶして、夕方4時過ぎに八幡平に向かった。ドライブやハイカーはほとんど帰った後で、誰もいなくなった静かな八幡平山頂を登る。10m以上もあるスキーツアーの標識を見上げて、冬の積雪の多さを想像できる。97年2月に吹雪のなか岩手から秋田側へスキーで越えたことが懐かしい。山頂をあとにガマ沼、八幡沼の木道を巡る。稜雲荘は入口の位置が変わっていたので新しく立て替えられたのだろう。薪ストーブもあるウッディな小屋で、晩秋にでも泊まってみたくなった。人っ子ひとりいない八幡沼の木道をのんびり歩く。足下にはチングルマや水芭蕉の花花花、聞こえるのは鳥の鳴き声と残雪から流れるせせらぎのみ。心底しあわせな時間を過ごした。


6/27 【姫神山】
 一本杉登山口550m(8:30)→姫神山1123m(9:35/10:35)→一本杉登山口(11:20)
 <天候:曇り>

 最終日は八甲田山の帰りにいつも気になっていた、きれいな裾野を広げている姫神山へ。登山口の一本杉キャンプ場はすでに10台以上の車がとまっていた。8時30分に出発、樹齢三百年という大きな一本杉の下にある清水は岩手の名水20選にも選ばれているが、検査で飲料水不可の看板が立っていた。

 ざんげ坂の急登を登ると緩い尾根状となり、ミズナラやダケカンバなど広葉樹が拡がる。斜度20度ちょっとで厳冬期の半日で軽く登るにはちょうどいい。2月の山スキー計画を練りながら登る。8合目から灌木帯となって最後に巨岩を登って山頂に着く。山頂には多くのハイカーが休んでいた。西の正面に大きな岩手山、その左に秋田駒と和賀岳、右手には八幡平、南には早池峰、東には延々と山が連なる北上山地、1124mとは思えない素晴らしい展望だ。岩の上に腰掛けてのんびり1時間ほど景色を楽しむ。

 登っている人を見ると、高齢の男性や女性のグループ、スポーツ少年団、若い女性グループ、ファミリー、それとお父さんと二人で登る小学生ほどの親子も何度かすれ違った。子供達はがんばって登った山頂で食べるおにぎりを楽しみにしているらしい。大きな岩手山に対峙する「岩手山の妻だったと言われる姫神山」は地元に愛されている里山なのだろう。また、今回は様々な角度から岩手山を眺めて、その頂にも立った。改めて岩手山は名山だと思った。

 下山後に、麓の渋民にある石川啄木記念館に寄った。岩手山と姫神山の懐で育った啄木が詠んだ歌「ふるさとの山に向ひて 言うことなし ふるさとの山はありがたきかな」
                                 (宮田記)