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2010秋・北海道の山旅
ニペソツ山・雌阿寒岳・羅臼岳・十勝岳

アルバム

山域山名:北海道・ニペソツ山・雌阿寒岳・羅臼岳・十勝岳
期  日:2010年9月18日(土)〜24日(金)
参 加 者:宮田(単独)

旅の記録:

 北海道をひとりで旅するのは学生以来である。今回は結婚休暇以来、久しぶりに長期休暇を取ったので、愛車プラドとともにフェリーで道内入り。道内4泊、フェリー2泊の計7日間、道内四山の山行記録と併せた北海道の山旅を報告します。


9/18(土) 北本(13:50)=仙台港(19:00着/19:40出港)=太平洋フェリー・きそ<船内泊>

 北本から仙台まで通常なら3時間強ほどの時間だが、意表をつかれて3連休の初日とあって午後の東北道は栃木で7q、上河内で20q、国見で11qとまだ渋滞が残っていた。上河内の渋滞を抜けるのに1時間以上かかってしまい、この混雑では19時までに仙台に着かないのではとの不安も抱え、普段しないような運転で高速をガンガン飛ばす。ギリギリセーフで仙台港にちょうど7時に到着。出港手続きを済ませて、ひとまず安堵。

 カーフェリーに乗るのも北海道旅行の学生以来。連休中とあって車両ブースも満杯だった。大部屋の2等だが番号が割り振られたが、昔は雑魚寝だったような気がする。名古屋〜仙台〜苫小牧を運航する太平洋フェリーは「感動の太平洋クルーズ」とパンフでうたっているとおり、設備も十分。特に乗船した「きそ」は、フェリーオブザイヤー5年連続受賞している超豪華船である。ステージがあるシアターラウンジでは夜にはプロによるピアノとエレクトーンの演奏と映画上映、広々したロビーにもピアノがあって到着の朝にも生ピアノ演奏があった。ゆったりと休む空間も多く、確かにクルーズと呼ぶにふさわしい船旅を味わった。ロビーで話をしたフェリー通のライダーによると、帰りの大洗便は質素と聞いていたが、そのとおりであった。


9/19(日) 苫小牧港(11:00入港)=苫小牧(13:00)=沼ノ端東IC=鵡川IC=富内=日勝峠=
十勝清水IC=音更帯広IC=糠平温泉(20:00)<車中泊>

<くもり後晴れ>

 夜は三陸海岸の町灯りがすぐ見える沖合を時折雨のなか航行。苫小牧に近づくと、オロフレ山、ホロホロ山、恵庭岳、樽前山など胆振の山々が良く見える。無事ににわか雨降る苫小牧港に入港。

 下船後、まずは‘旨いこってり系ラーメン’が食べたいのと、旅の情報を仕入れに苫小牧駅の観光案内所へ。紹介された駅北口すぐの「ふたば家」に向かう。みそラーメン+ネギトッピングを注文。ここのスープは濃厚で実に旨かった。家に帰ってネットで調べたら苫小牧でも評判の店らしい。

 腹ごしらえした後は、無料の日高自動車道を走って、鵡川ししゃもで有名なむかわ町へ向かう。天気も回復して晴れとなった。無人のJR鵡川駅を見た後、道道74号線で穂別川沿いを走る。車はほとんど走っておらず、(高速道)並のスピードで走る。着いた先は、大正11年から昭和61年まで、鉱石などの輸送ターミナルを担って来た旧国鉄富内駅と構内・客車がそのまま呼ばれ保存されていて、登録有形文化財にも指定されている富内銀河ステーションである。駅舎内は、高倉健主演の映画「鉄道員」にも使われたとのこと。しばし青空の下、北海道の秋を感じながら、残されたホームのベンチに座ってのんびり時間を過ごす。今日は爽やかだが、ラジオではこの夏以降初めて道内の気温が25℃を上回らなかったと。地元に人に話を聞くと、北海道も35℃越えの日もあって、みんな暑くて参ったと言っていた。でも「熊谷から来た」というと、みんな「あの暑いところ」と知っていたので、‘あついぞ!熊谷’の知名度は全国区になったということか。

 この後、山向こうの平取町振内にある同じく旧国鉄富内線の振内鉄道記念公園に向かう。記念館はなぜか休日休館で入れず。ホームと線路はそのまま残され、D51−23蒸気機関車と雑形客車2両が静態保存されていた。ずいぶんのんびりしているが、今日は糠平まで行かなくてはならない。国道237号、274号を走り日勝峠を越える。ちょうど時間は日没間近の5時を過ぎたところ。十勝地方は雨が上がったばかりで、眼下の十勝平野は雲間から夕陽がさして、とてもきれいな景色であった。

 夕飯は十勝清水町で今年7月に誕生したという、ご当地グルメ「十勝清水牛玉ステーキ丼」を食べてみるか。道内でも有数の農業王国の清水町が「地元産の肉用牛(道内生産第2位)のなかで淡泊な赤身が美味しい十勝若牛をカットして焼いたステーキと鶏卵(道内生産第3位)を組み合わせて作った新しいタイプの「牛丼」で、味付けは醤油味の「豚丼」を意識して「味噌味」に。つまり、<醤油味の「豚丼」VS味噌味の「牛玉丼」>」という触れ込みである。現在9軒の店が出しているが、国道38号沿いにある食堂「ごはん屋ゆめあとむ」へ。レアのサイコロ牛とふわふわ卵が絶妙の舌触りで美味しかった〜。とは、食通でもなんでも山ヤの弁である。

 十勝清水ICから無料の道東自動車道を走って音更帯広IC、長い直線が続く国道241号、山間道路の273号で糠平温泉に到着。娘さんとホテルに泊まっている職場の同僚に挨拶して、そのホテルの風呂に入る。そのあと、温泉街にある近くの駐車場で仮眠した。


9/20(月)…【ニペソツ山】
行動記録:十六の沢登山口1020m(5:50)→尾根1590m(6:50/6:55)→天狗のコル(7:09)→
前天狗西1888m付近分岐(8:04/8:10)→ニペソツ山頂20120n(9:08-9:31)→
天狗平(10:28/10:55)→十六の沢登山口(12:55)

<天候:くもり時々晴れ間、稜線は霧>

 まだ暗い午前3時30分起床。朝食を取ってから車で登山口に移動する。登山口には20台ほど駐車して満杯状態、狭い林道の傾いた路肩に車を駐める。

 5時50分に十六の沢登山口を出発。BOXに置かれた入山届ファイルに名前、住所、携帯番号等を記入する。第三者にも見られるので義務ではないが、今回の他の山すべてに同じファイルがあったので、北海道の主要な山にはすべて置かれているのであろう。

 昨日の雨で登山道は結構ぬかるんでいる。前天狗の中腹は見えているが、上部は霧に包まれている。急登、緩登と交互の尾根を快調なペースで登る。下部は針葉樹、中腹から広葉樹に変わる。1500mまで登ると紅葉が始まっていた。北海道も先週まで暑かったので、本格的な色づきはまだこれからの感じである。

 小天狗直下にあるちょっとした岩場を越えると、天狗のコルまで一旦約50m下る。コルには幕営スペースはあるが沢水はない。コル上の灌木は紅葉が進んでいた。前天狗の登りにかかる1700mからハイマツ帯に変わった。北海道の森林限界は低い。露岩帯を行くようになると、どこそこから「ピチューピチュー」というナキウサギの鳴声が聞こえる。姿を見ようと声がした方向を見るが、鳴き主の姿は確認できず。

 前天狗岳直登ルート分岐が分からないまま巻道を登る。この辺りでも「ピチューピチュー」と盛んに鳴いている。霧のなかで気温も低くしかも風も強い。前天狗巻道でたまらず雨具の上着と手袋をはめる。

 前天狗西1888m付近には、朽ちかけた幌加温泉分岐のどう道標があった。北海道の道標は昔のものがそのまま使われているのだろう。本州の立派過ぎるものに慣れてしまっているので、とても貧弱に思えてしまう。一旦急坂を下り、天狗岳に登り返す。

 天狗岳から望むニペソツ岳の勇姿が見たかったが、相変わらず霧と強風で今日は願いがかなわないのか。天狗平には適当な幕営地がある。でも、夏は水がなく、天候が悪い日は強風への備えが必要だろう。天狗岳からまた一気に細い稜線を150mを下って、また300mの急な登り返しで黙々と登り切るしかない。東側は絶壁なので、登山道は東側の急斜面につけられていた。

 午前9時8分にニペソツ山頂へ。気温6℃と強風で体感温度は氷点下か、連日38℃の暑さに慣れた体にはきつい。実家が横浜で転勤で札幌に住んでいるという単独行の男性と写真を取り合う。北海道で一番格好いい山、ひょっとしたら展望もあるかと期待をかけて、寒い中、長居する…が、ダメだった。上空は晴れているが、稜線を這うようにトムラウシ方面から雲が絶え間なく流れていく。羅臼岳であった人に聞いたら、この日は大雪山ではいい天気だったらしい。残念。山頂をあとにもと来た道を戻る。

 天狗平でしばし、ニペソツの勇姿を見たくて粘るが、最後までその姿を現してくれなかった。露岩帯では相変わらず「ピチューピチュー」と聞こえる。その都度、目を凝らすがナキウサギの姿は分からない。前天狗の下りでまた聞こえたので、しばらくジーと岩を見ていると、いたー!。岩の上で鳴いているナキウサギが。慌ててシャッター押そうとしたら、なぜが他のボタンを押してしまい、ムービーモードになってしまった。新調したデジカメはまだ手に馴染んでいなかった。でも、ナキウサギの姿をやっと見れて満足。

 天狗コルまで下りると、穏やかな空気となってポカポカである。のんびりと紅葉を楽しみながら下る。糠平川挟んだ向こうには尖った双耳峰のクマネシリ岳が美しい。地元ではおっぱい山と呼ばれている。登山口ポストのファイルに下山時刻を記入していると、その脇で休んでいた登山者から話しかけられる。地元旭川近郊に住む2人で、e登山倶楽部を主催する方であった。そのあと1時間も大雪やトムラウシ周辺、十勝、日高、羅臼の生情報をたくさん聞かせていただく。やっぱり裏情報は地元の方から聞くに限る。

●南&西クマネシリ岳…通称おっぱい山。地図に道はないが、林道で近くまで入れる。踏み跡がしっかりしていて南クマネシリ岳から西クマネシリ岳へ登れる。鞍部から小沢を下れば林道に出る。

●トムラウシ岳…9月上旬の豪雨でヌプントムラウシ林道が崩壊して、沼ノ原登山口は使えない。トムラウシ岳最短は美瑛町川の台地林道経由が早い。美瑛森林事務所で鍵を借りる。豪雨で林道崩壊したかもしれない。クワンナイ川は、地元でも憧れの名ルートである。

●オプタテシケ山…十勝側のトノカリ林道が雨量計のある三股橋1.5キロ前まで除雪してある。GWでも標高差1300mで十分日帰り登頂&滑降!が可能である。

●富良野岳…ジャイアント尾根は十勝周辺イチの山スキー名ルート。北尾根よりもジャイアント尾根。上ホロ荘から温泉スロープもなだらかで最高のルート。

●十勝幌尻岳…日高の山では手頃な山。道もしっかりしている。

●芽室岳…日高の山で一番手頃な山。林道からも近い。

●楽古岳…日高の山では手頃な山。林道から一気に尾根を上がる。南日高の展望がいい。

●幌尻岳…幌尻完全予約制で大変。林道もかなり手前から歩かされるようになった。車の回収がなければ、伏見岳、ピバロイ岳、1967m峰経由がいい。下山口もチロロ林道もあり。林道鍵は森林管理局に申請すればOK。ただし20個しかないのでなければ借りられない。合い鍵が出回っている?らしい。

●カムイエクウチカワシ山…この夏、八の沢カールに小熊が居ついて、人間が入っても逃げなかった。

●羅臼岳…岩尾別ルートは2週間前まで、登山道に熊が出て規制されていた。木に付いた蟻を食べにきていたので、レンジャーが木を取り除いたとのこと。


 下山後は、糠平川沿いに残されている旧国鉄士幌線のアーチ橋を巡る。旧幌加駅には昔のレールとホームが当時のまま置かれていた。幌加が一番栄えた昭和10年頃の写真がそのレール脇のプレートに埋め込まれていたが、今立っている足下のレールとその写真のレールがまったく同じであったのに、ひどく感動した。

『そびえる山脈を貫く。それは鉄道技術者だけではなく、平野の少ない日本に住む者にとっての夢だったと思う。素晴らしい平原を持つ十勝平野も、現実は三方を山に囲まれる閉ざされた大地だった。ここに明治38年、狩勝峠を越えて根室本線が開通し、やがて池北線、広尾線と各方向に出口を求めてレールがのびていった。そのなか、一本の鉄道が東大雪の山塊にまっしぐらに向かっていった。士幌線だった。

 大正11年の改正鉄道敷設法には、「十勝国上士幌線ヨリ石狩国ルベシベ(上川)に至ル鉄道」とある。標高1450mの大難所、三国峠を越えようと目論んだのである。しかしその夢は時代によって砕かれる。昭和62年、士幌線は消滅した。その跡に多くの美しいアーチ橋を残して。』(士幌線JTB発行「廃線跡懐想」より)

 16時過ぎにこの旅で唯一泊まった糠平の温泉ペンション「森のふくろう」へ。夕食のお品書き…釜飯、チゲ鍋、うどの酢みそ合え、行者にんにくおひたし、焼豚のクリームチーズのせ、ツブ貝のワサビマヨネーズ合え、うどのきんぴら、温泉玉子入サラダ、長いもチーズ巻き、オショロコマから揚げ、メロン。隣テーブルの札幌から来た老夫婦と道内や本州の話しをしながら、地元素材ふんだんの美味しい夕飯を食べた。


9/21(火)…【雌阿寒岳】
行動記録:雌阿寒温泉710m(13:50)→1290m(14:53/15:00)→
雌阿寒岳1499m(15:18/15:45)→雌阿寒温泉(16:50)

<天候:朝雨、くもり後晴れ>

 今朝は雨、午後から回復の予報なのでゆっくり宿の朝食を取ってから出発。ふるさと銀河鉄道の廃線跡を見ようと旧足寄駅へ向かう。駅跡地は「あしょろ銀河ホール21」として展望台のあるビルになっていた。入口前に広場には御影石に掘られた松山千春の顔入り(最近のスキンヘッドです)の歌碑が立っていた。緑のボタンを押すと「大空と大地の中で」がスピーカーから流れる、♪果てしないおおーそらと♪といつも千春の歌声が響いていた。2階は千春ミニギャラリーで、2年前に公開された千春の半生を描いた映画「旅立ち」のロケ地がここ足寄であるが、映画撮影に使った千春の家を公開しているとあったので、1階の観光案内所に聞くと、今日は平日で鍵が閉まっているが職員の女性が鍵を開けてくれるとのこと。その家は駅から500mの場所にあり、古い空き家をセット用に使ったらしい。

 その案内してもらった女性は栃木県岩舟町出身で、昔越谷にも住んでいたことがあったので話しが盛り上がり、足寄のことや子育て、千春や宗男の地元話まで聞かせてもらった。その後、千春の実家(今は母親のみが住んで、千春と娘は札幌)や街中のロケ地を歩いていたらあっという間に昼に。結局、足寄を出たのが12時半過ぎになってしまった。買ったばかりの千春CDを聞きながら、途中でゆでトウモロコシを食べて、やっと雌阿寒岳登山口の雌阿寒温泉へ。


 登山口出発は13時50分。さすがにこの時間から登り出す人間はいない。登山者名簿を見ると一番遅い人でも12時30分だった。今日は平日なので、全部で15人ほど。登り出しは針葉樹のなかの登り。百名山なので、登山道がえぐれている箇所が多い。火山のもろい地質にはオーバーユースである。900m辺りからハイマツ帯に変わりすぐに森林限界となり、急に視界が良くなる。

 道東の山に来るといつもそうだが、東西南北の体内磁石がどうも狂ってしまう。プロトレックの磁石で確認しなから山座同定。西方を見ると、一番高いのは大雪山旭岳か。長大な連なる山脈にトムラウシ、十勝連峰が見える。昨日登ったニペソツは大雪連峰の山並みに埋もれてよ分からなかった。南にはエメラルドグリーンのオンネトーと広大な十勝の丘陵地帯が拡がっている。

 観測機器がある1290mで気温8℃、寒いのでたまらず雨具上着を着る。標高は低いがさすがに最果ての山、吹きっさらしの火山砂礫の尾根道は風が強い。目の前の雌阿寒西面の山容は迫力がある。どんどん高度を上げるとさらに風も強くなった。ポンマチネシリ火口縁に上がると、赤沼脇の側壁から硫黄臭の煙がすさまじい音と勢いで噴き出している。すごいのひと言。風に飛ばされないように踏ん張りながら山頂へ。

 雌阿寒岳山頂からは、中マチネシリ火口と剣ヶ峰、その奥に阿寒湖、雄阿寒岳が見える。巨大なポンマチネシリ火口からはすごい煙が上がっている。すばらしい景色だ。山頂で会った帯広から来た男女4人組に写真を撮ってもらう。風を避けるため岩陰に隠れるように休む。登山口の野中温泉に泊まってもいいかと思い携帯で電話してみたが、今日は満室とのこと。前日もいっぱいだったので、すごい人気宿である。

 下山は夕方の斜光が雲間からせん光に照らすオンネトーを見ながらで気分よい。時々、ポイントで写真を取る。790mの下りもアッという間であった。

 温泉入浴はあとにして、すぐに車を走らせる。オンネトーから夕焼けの雌阿寒岳を見るためである。ちょうど、山肌が赤く染まっていた。素晴らしい。駐車場で明日のパッキングをしていると、月が明るくなってきた。明日は中秋の名月である。しばらくオンネトーで景色を眺めることにする。太陽が沈んで暗くなると、どんどん月が明るさを増していく。阿寒富士右側奥にまん丸の月、その月に照らされる阿寒岳にかかる雲、オンネトーに反射する月の光、感動ものの景色を見ることができた。野中温泉別館の硫黄臭が強い極上の湯に浸かって、いざ150qの道のりを知床ウトロへ向かう。

 途中の弟子屈でこってり系ラーメンを食べて、ウトロに着いたのは午後11時半を過ぎていた。ウトロの道の駅で仮眠する。


9/22(水)…【羅臼岳】

行動記録:木下小屋230m(6:43)→弥三吉水790m(7:41/7:50)→
大沢入口1120m(8:34/8:45)→羅臼平1340m(9:11)→羅臼岳1659m(9:50/10:05)→
羅臼平1340m(10:50/11:21)→大沢入口1120m(11:35/11:40)→極楽平800m(12:12/12:20)
→木下小屋230m(13:15)

<くもり後晴れ、稜線は昼前まで霧>

 午前4時起床。長距離ドライブの疲れもあって寝過ごしてしまった。海沿いのある道の駅は海からの風が強い。空はまだ暗い曇天模様。天気予報では、里は午前中には晴れてくるとのこと。目の前にあるコンビニで朝食。すぐに岩尾別に向かう。登山口の木下小屋前にはすでに10台ほどの車。登山者名簿を見ると、すでに18名が向かっていた。すでにこれだけ人 が歩いていれば熊も出ないでしょうと安心して出発する。

 6時43分に木下小屋を出発。針葉樹と広葉樹林の急登から始まる。看板には「注意!!ヒグマ出没多発区間。この先650m岩峰までの区間は、登山道上にありの巣が集中し、頻繁に熊が食べにきています」と書いてある。ニペソツで聞いた話のとおりである。

 登山道は明瞭でやはり百名山。要所要所にある道標も本州並に整備してある。途中で千葉から来た単独の人と話す。昨日、一昨日と大雪山黒岳に泊まっていたが、昨日は雪になりそうな冷雨で下山してきたとのこと。今日も快調なペースで登る。

 弥三吉水は豊富な水が流れているが、北海道の沢水をそのまま飲む気にはなれない。脇にテント3張りくらいのスペースあり。極楽平から望む羅臼は山頂を雲が早いスピードで流れている。今日も強風に吹かれそうだ。仙人坂の急登を抜けると銀冷水。こちらの流れは幾分細い。同じく脇にテント3張りくらいのスペースあり。どんどん高度を上げると次第に気温も下がってきた。

 森林限界の大沢入口。ここからはハイマツ帯の吹きっさらしで、下りてきた登山者に聞くと、羅臼平は凄まじい強風とのこと。冬の帽子、手袋、オールシーズンの雨具上着と初冬装備とする。そのおかげで、烈風に吹かれても寒さは感じない。秋の衣類の選択は重要である。羅臼平はすさまじい風だ。逃げるように羅臼岳に取り付く。登山道は南東側に付いているので、北西の風の影となるので風は弱い。霧のなか高度を稼ぐ。岩清水分岐からは露岩の約200mの急登となる。大きな岩を越えると、山頂が見えた。

 9時50分に羅臼岳山頂へ。山頂は西からの強風が煽られるくらいに吹いている。山頂にいた登山者で代わる代わる写真を取り合う。1等三角点は丸い鋲が岩に埋められていた。烈風の悪状況だが、せっかく登った最果ての頂きだ。しばしとどまって、空気を存分に吸い込む。気温6℃だが、体が慣れたのか寒さは感じない。羅臼岳山頂から国後島を眺めたかったが、残念ながらかなわず。仕方がないが下山しよう。

 下り出すと、次第に雲が薄くなってきた。直下でかすかに国後島が見えてきた。よかったよかった、これを見なくては。高度を下げていくと、どんどん視界も回復。羅臼平上では時折青空ものぞくようになった。青いオホーツク海を挟んで細長い国後島を眺める。あんなに近いのに。日本の領土に戻ってきたら、島にもたくさんいい山があるに違いない。羅臼平の反対側には双耳峰の三ツ峰も美しい。しばらく休みながら、その景色を眺める。

 羅臼平は相変わらず風は強いが、登りの時ほどではない。岩陰でパンをかじる。どんどん稜線を流れる雲も薄くなり、羅臼山頂がいよいよ姿を現す。いい景色だ。休みがどんどん長くなってしまった。大沢の下りも、眼下に真っ青なオホーツクの海、知床五湖を見ながら快適な下りである。大沢入口で、着ていた雨具、帽子などをザックにしまう。あとは快適な夏道を下るのみだ。

 極楽平は、朝に見えていなかった羅臼岳が良く見える展望台であった。知床連山をゆっくり眺める。さらに下っていくと、山頂や羅臼平で会った木下小屋に泊まった2名といっしょになったので、話しながらゆっくり下る。どうゆう関係?と聞くと、ひとりは地元釧路のおじさん、ひとりは千葉から来たという若者と親子ほども年が離れている2人であった。。旅は不思議である。

 13時15分に下山。無料の露天風呂でも良かったが頭を洗いたかったので、この気温ではちょっと風を引くかもしれないで、岩尾別温泉の内湯に入る。

 車に戻ったのがちょうど14時、ニセコまでは550qあってとても今日中に着けそうにない。それではサブルートにしていた十勝岳に登ろうと、吹上温泉白銀荘に今晩泊まれるか電話をしたところ、「ベッドは空いてはいるが、今知床では入館の午後8時はとても無理、早くても7時間以上はかかる」と断られる。では、しょうがいないと、知床峠をドライブして、途中で斜里岳やオホーツクの海、夕焼けでも眺めながらのんびり向かうことにする。ラジオでは、今日、大雪山や黒岳で初雪と初冠雪があったと流していた。

 吹上温泉まで300q弱の道のり、濤沸湖で美しい夕焼けをしばし眺め、北見で流行の豚丼を食べる。ウトロから7時間かかって途中の旭川に着いたのは午後11時であった。疲れ果てて旭川道の駅で仮眠する。


9/23(木)…【十勝岳】
行動記録:吹上温泉1017m(7:10)→望岳台分岐1104m(7:42)→1500m(8:10/8:20)→
昭和火口縁1700m(8:43/8:50)→十勝岳2077m(9:26/9:45)→避難小屋1350m(10:35/10:45)
→吹上温泉1017m(11:30)=苫小牧港出港(18:45)

<くもり、稜線は霧>

 午前5時起床。今日もまた寝坊してしまった。コンビニで朝食を取って、すぐに吹上温泉に向かう。白銀荘は2006年2月に訪れて以来だ。真冬とは当たり前だが景色が全然違う。登山者名簿を見ると、白銀荘から十勝岳に登る人はほとんどいない。山頂へは望岳台から往復するのが一般的のようだ。白銀荘からは、みんな三段山に登っていた。夕方6時45分苫小牧出港のフェリーに乗らなければならないため、今日は時間のゆとりはない。周回コースは諦めて、往復コースを取ることにする。

 7時10分に吹上温泉を出発。整備されたキャンプ場の上から巻道に入る。観測計や歌碑の脇を通り、フリコ沢を渡渉する。水量は結構あり、飛べる石を探して渡る。ほどなく溶岩泥流の上を抜けて分岐だ。今日は祝日なので登山者がいっぱい歩いているのを想像していたが、望岳台分岐から見える人影は数パーティがやっと確認できる程度と拍子抜け。望岳台ルートに入って、やっと山頂への登りとなる。今日は体に負荷をかけるようなペースでガンガン行きます。あとでみたら時間800mというハイペースだった。

 大きな岩のある1500mで最初の休憩。眼下に美瑛、富良野のいかにも北海道らしい丘陵地帯が俯瞰できる。あの丘を何回巡ったかなと昔の旅を思い出す。山をみると、富良野岳と美瑛岳にはうっすらと雪が積もっていた。火山らしいガレた荒涼とした山肌を登る。昭和火口縁に立つと、十勝岳本峰が目の前に見える。残念ながら山頂は雲のなかだが、鋸岳から平ヶ岳、本峰までの岩壁の1900mから上部は雪で白くなっていた。

 北側には昭和火口がパックリと口を開け、南側には煙を上げる前十勝62U噴火口が見える。気温2℃、ここからは風も強いので、羅臼に続いて初冬装備に身を固める。十勝岳直下の急登までは柔らかい火山灰を踏んで登る。道標にはエビの尻尾が出来ていた。急登にさしかかる頃から雪が出てくる。滑りやすいので慎重に登る。どんどん雪が増えて、道標やロープに付いたエビの尻尾は5pほどに成長していた。冬の景色である。うれしくなって雪を口に入れる。ジグザクに登り着ると大岩が立つ十勝岳山頂だ。


 2077mの十勝岳山頂は気温0℃とめちゃくちゃ寒いが、日本一早い初冠雪を踏んでの山頂は気分も最高である。熊トレメール打つ指も、かじかんでまともに打てないほどだった。おにぎりとテルモスのお湯を飲んで、しばし山頂にとどまる。さぁ、下山しよう。ストックがないので、滑らないように下る。昭和火口縁を抜けて、ガレ場を一気に駆け下りる。避難小屋は、2008年に立て替えられたので中はとてもきれいだった。条件が厳しい積雪期には、ありがたい避難小屋であろう。吹上温泉には、予定の昼前に着いたので時間的な余裕ができた。のんびり温泉に浸かる。



 吹上温泉から苫小牧まではルートが複雑で、温泉従業員に聞いても明確な案内はなかった。万が一遅れたら大変なので、一番確実な旭川から道央道経由で向かうことにする。距離は約250q、ナビでは4時間。美瑛で土産を買って、旭川鷹栖ICから苫小牧沼ノ端東IC経由で苫小牧には午後4時半過ぎに到着。最後の夕食は回転寿司で腹を満たす。関東では食べられない〆ホッケ、トロづくしといつもより高めの皿を取った。フェリーに乗る前にスーパーに寄って、北海道しか買えないサッポロクラシックロング缶2ケースを自分のお土産にする。

 18時過ぎに商船三井フェリー・さんふらわさっぽろに無事に乗船。苫小牧出港。船員に聞くと、昨日、今日と満員であるが、台風12号の影響で明日は運休が決まっているとのこと。今日でなくてよかった。

 「さんふらわさっぽろ」は行きの太平洋フェリーと比べると、質素感は否めないが、今日は2等でなくカジュアルという個室タイプのベッドを取ってあったので、ゆったりすることができた。


9/24(金)…大洗港入港(14:10)=大洗IC=加須IC=北本(17:00)

 帰りのフェリーはどこかもの寂しい。朝陽を眺めようと午前5時に甲板に出る。上空の雲は黄色に染まったが、太陽は出なかった。午前9時から草薙剛、新垣結衣の映画『BALLAD 名もなき恋のうた』で時間をつぶす。大洗港には予定どおりに入港。北関東道開通で北本までは2時間ほどで到着。

 学生時代に戻ったような、まるで夢心地のぶらりひとりの山旅は終わった。(宮田記)

(参考)
 フェリー運賃…仙台→苫小牧 20,500円(WEB最大40%割引)2等
        苫小牧→大洗 26,100円(JAF10%割引)カジュアル ルーム
 総走行距離 …1710q(道内:1225q/本州:485q)