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甲斐駒ヶ岳・黒戸尾根

【個人山行記録】
  

山域山名:甲斐駒ケ岳、黒戸尾根
日付期日:2012年7月22日(日)
参 加 者:菅谷孝道、他1名

行動記録:駐車場(6:20)→竹宇駒ケ岳神社(6:25)→笹の平分岐(7:19)→刃渡り(8:32)→
 七丈小屋(10:10/10:45)→甲斐駒ケ岳山頂(12:46/13:05)→大きな岩の下2,842m
 (13:21/13:45)→七丈小屋(14:38/14:50)→刃渡り(16:19)→竹宇駒ケ岳神社(18:40)
 →駐車場(18:50)
〈天候:雨時々曇り〉

 昨年6月に受けた肩の手術と長期リハビリの為、本格的な山歩きからは1年以上離れていたが、熊トレ入会とドクターからの許可が出たのを機に、今の自分の体力を確認するためにも以前から気になっていた黒戸尾根日帰りに挑戦した。

 早朝駐車場に到着した時には天気も不安定で小雨が降っており、広めの駐車場は空きスペースの方が多い位だった。駐車してある十数台の車には既に登山者の姿はなく、悪天候の中このロングコースを無事に日帰り下山出来るのかと遅めの出発を後悔しながらスタートを切った。

 登山口の竹宇駒ケ岳神社で登山祈願をして山を見上げたが、広がるのは厚い雲ばかりだった。蒸した雨のしずくが生暖かった為雨具は着用しなかった。登山道は思ったよりもよく整備されており、しっとりとした緑の森の中を歩く気持ち良さを久しぶりに感じながら重たい身体に鞭を打ち足を速めた。一時間に標高差500m以上のペースとは?お気楽登山が主体だった私には半分玩具化していた腕時計の高度計を確認しながらのハイペースの登りとなり、刃渡りに着くころには心臓の鼓動も息遣いも激しく、汗なのか雨なのか上半身ベースレイヤー一枚だけの身体はびっしょりになっていた。景色の素晴らしい場所だと事前にガイドブックで確認していたが、雨はしばらく前から本降りとなり、途中私を追越して行ったトレイルランナーも前進をあきらめたようでまた直ぐに追いつき下山して行った。挫けそうな私の心を一日最後まで励ましてくれたのは登山道の至る所にある石像や鉄剣で、まるで秩父の札所の寺社に来たような風化で顔のはっきり見えないものや自然と一体化しつつあるものなど様々であった。往復ともほぼ全ての石像にニ礼二拍手一礼をし、後から追いかけてくる友人を待ちつつ、辛くなると六根清浄(どっこいしょ?)を小声で唱えながら何とか七丈小屋に到着できた。雨も一時止み、小屋の脇にある水道からは天然水があふれ、内側から焦げ付きかかっていた全身を再び生き返らせてくれた。『ここの水はうまい』こんな悪天候の黒戸尾根歩きでもお勧めできるポイントの一つである。

 しばらくして休憩時間の終わりを告げるチャイムの様にまた雨が降り出した。逃げるかのごとく再び厚い雲の中へと続く登山道にゆっくりと向きを戻した。梯子だけでなく段差の大きい岩場も沢山あり、足元が濡れていて滑りやすく不安定であったが、不思議な事に全く風がなかった。濡れた身体と体力の無さがハイペースで来た自分を祟り、一気にペースダウンした中盤戦だったが、何とか頂上の立派な祠の前に立つ事が出来た。登頂の感慨もつかの間、さすがに3,000m級の山頂で全身びしょ濡れは真夏でも震えを起こし、体に備蓄が沢山あるはずの私でさえ背中から寒さを感じた。頂上からほんの少し下った2,842m(GPS参照)にある大きな一枚岩の下で雨宿りしながら乾いた服にさっぱりと全身着替え、今回の山用に薄目の2.5レイヤーにした雨具を着た。おそらくこの岩に助けてもらった人は多いのではないかと想像しながら、先ほど登ってきた登山道を下り始めた。はじめは乾いていて調子が良かった着替えも、厚着が苦手な私にとって雨具は苦痛で、しばらくするとすぐに登り以上に暑さを感じ、黒戸尾根の長い下り道でこの山の奥深さを実感した。

 刃渡りまでは順調に下り、そこでNHKのBS百名山の撮影に遭遇した。スタッフ一人ひとりの荷量の多さにも驚いたが、偶然は奇遇を呼び、朝から不機嫌だった空がいきなり泣く子が笑いだしたかのように青空が雲の隙間から顔を覗かせた。雲海と街並みが交互で、周囲の山並みもがっしりと広大で素晴らしく、白と緑と青のコントラストがずっと無口で歩いてきた私に「元気出せよ」とそっと話しかけてくれている様であった。しかし山の天気は気まぐれでまた雨雲を呼び、ここからの下山道は登って来た時よりも長く感じた。なかなか笹の平分岐や見覚えのある場所にたどり着けず、尾根道の長さを体力不足だけでなく膝痛としても感じ、ようやく登山口の竹宇駒ケ岳神社にたどり着いた時にはくたくたになっていた。

(所感)
 とにかく長い一日となり、反省すべき点は数多く、挑戦する前は運動不足の自分で本当に無事に日帰りできるか不安でいっぱいでしたが、なんとか下山した時の感動と嬉しさはこれからも忘れないように大切にしたいと思いました。「自分も頑張れば出来るんだ。もしかして凄いのかも(笑)」と思いましたが、帰宅後3日間は膝痛と筋肉痛に悩まされました。また、今年の冬場に張替えたばかりの登山靴のソールも何箇所か再び剥がれてしまいました。

 ペース配分や天気に合った山歩きの仕方を一日無視してきた者に容赦なく平等に体力の限界を突き付け、簡単には始めた事を終わりにさせてくれない約2,200mの標高差と道のりは、日頃の体力作りとボディケアの大切さを私に実感を持って教えてくれました。