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立山〜阿曽原温泉〜下ノ廊下〜黒部ダム周回

アルバム9/22  9/23 9/24

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山域山名:北アルプス・立山三山、黒部川下ノ廊下(富山県)
期  日:2013年9月22日(日)〜24日(火)
参 加 者:L宮田、福田(計2名)


行動記録:
9/22 北本(3:15)=扇沢(7:00/7:30)=室堂2420m(8:50/9:20)→
 一ノ越2705m(10:00/10:10)→雄山2991m(10:55)→大汝山3003m(11:15/11:25)→
 真砂岳2861m(12:00/12:25)→内蔵助カール(12:40/12:50)→内蔵助平1700m(15:30)<テント泊>
<天候:くもりのち時々晴れ>

 9月は週末ごとに雨で山行きのタイミングとが合わず、前半3連休も含めてすべてキャンセル…だったが、やっといい天気に巡り会えそうだ。しかも、狙っていた黒部下ノ廊下がやっと「開通」との情報を得た。黒部ダムから廊下を下り歩くだけではつまらないので、テント泊で立山から内蔵助平、仙人池を経由して阿曽原温泉まで下って、下ノ廊下をダムまで登る周回ルートをトレースした。

 連休2日目とあって、扇沢はいつもの無料駐車場はおろか、有料もすべて満杯。道路に立つ交通整理員の誘導で遙か下の臨時駐車場に案内された。急いで準備をして、扇沢駅まではダッシュで始発に間に合った。始発便はツアー客がいた程度で意外や空いていた。(昨日の朝はパニックだったらしいが)

 室堂までは順調に到着したが、外に出てみたらすごい人だった。室堂はちょうど草紅葉がきれい。一ノ越まで絶えずハイカーが行き交う。雄山の稜線も列ができていて、ほとんと動いていないようだ。…時間もかかりそうでまずいな…。案の定、渋滞に巻き込まれてノロノロ。ルートを外れて登ったりもしたが、石を落としてトラブルになるのも嫌なので自重気味に登る。雄山社務所前に人人人。それにしてもすごい人だ。立山は登山ブームのメッカだね。

 雪のない雄山はおそらく20年振りだろうか?。見下ろすサル又のカールには、秋になってもしっかりと雪(この下には氷河も)が残っていた。雄山ではザックも下ろさず、神社もパスして縦走路へ進む。すぐに列の後ろに追い付くが、最後尾の人は気づいているにもかかわらず、声を掛けないと先に譲ってくれない。そんなパーティが多いこと。立山だからと仕方がないか。人でごった返す大汝山で小休止。富士ノ折立では春に滑った南東シュートを覗き込む。雪がある方がよっぽど急だった。

 稜線を下って真砂岳山頂で内蔵助カールを見ながら遅い昼食タイム。11月もまた来ますよ。内蔵助山荘脇を通り過ぎてカール底へ下りる。雪渓は一部青くなって氷化?していた。赤い実をつけたナナカマドや色づき始めた稜線を見ながらカールを歩く。稜線の喧噪が嘘のように、このルートには他の登山者はまったくいない。

 富士ノ折立支尾根を乗り越えると、一気に700mダウンの壁へ。この日本で屈指のバーンは2011年GWに滑ったが、確か、あの岩の基部から滑ったんだよな、と記憶がよみがえる。屈指の急斜面は夏となると言わずもがなで、急な下りが延々と続いて道も相当悪い。スパッと切れている場所や雪渓の横断もあって慎重に下る。重たいザックで膝は悲鳴をあげて、内蔵助平に着く頃には疲労感たっぷり。時間はすでに15時30分、真砂沢まで行くと真っ暗になるので内蔵助平でビバークとする。

 春は大雪原だったが夏はブッシュだらけで、テントが張れるスペースを探す。分岐からハシゴ谷乗越に向かったところに、ひと張り分のスペースがあった。水場も近くにあって、缶ビールもスコッチも持っていたので、なんの不自由もない快適なビバークだった。



9/23 内蔵助平1700m(4:45)→ハシゴ谷乗越2035m(6:20/6:40)→剱沢南股1700m(7:40)→
 剱沢二股1580m(8:15/8:50)→仙人峠2150m(10:40)→仙人池ヒュッテ2080m(10:55/11:50)→
 仙人温泉1540m(13:25/13:40)→仙人谷ダム880m(16:20)→阿曽原温泉800m(17:20)<テント泊>
<天候:晴れ>

 星空だった割には、朝もそれほど冷え込まなかった。今日は阿曽原温泉まで、昨日歩き残した分も合わせてコースタイムで約13時間もの長丁場。しかも重たいザックで歩き通さなければならない。当然ながら夜明け前に出発する。

 ハシゴ谷乗越の途中で夜明けを迎える。急斜面を登ったハシゴ谷乗越はほとんど展望はないが、剱沢方面に少し下るといきなり剣岳の勇姿がドーンと眼に飛び込む。まさしく岩と雪の殿堂の名にふさわしい。しばし見とれて眺めてから下る。剣沢への下りはハシゴが続く急降下の道。内蔵助平経由でダムに向かうクライマー達とたくさんすれ違った。

 剣沢にかかる橋を渡って左岸に着けられた道を進む。二股の大きな吊り橋を渡ると三ノ窓が見えた。2009年GWに山スキーで滑ったが、また来てみたい。晴れてポカポカだったので、濡れて重くなったテントフライを乾かる。昨日、ヘリが何度も旋回していたが、三ノ窓雪渓で白骨死体が発見されたらしい。

 仙人山の尾根に取り付くが、これがなかなか急で長い。さらに背後から陽を浴びて汗だくだくとなる。登るにつれて、八ツ峰と三ノ窓雪渓がどんどん立って迫ってくるように見える。下ノ廊下のトレースが今山行のメインであるが、この景色も見たかった。やっと着いた仙人峠から木道を下ると仙人池ヒュッテに到着。昨日はほぼ定員の30名が泊まって賑やかだったらしい。(でも今日の予約はゼロとのこと)

 靴を脱いで食堂に入って、山小屋では珍しいナポリタンを注文する。出されたヤカンに入った冷たい麦茶も二人でがぶ飲み。ナポリができる間、去年から小屋をまかされている3代目の青年を話す。多くの登山者から慕われた先代のおばちゃんは去年から山を下りているらしい。昼食を食べて、仙人池をあとに仙人谷を下る。沢沿いの道を何度か渡渉して、秘湯マニアの聖地・仙人池温泉へ。今日は残念ながら通過だ。

 阿曽原温泉までは、2006年に開拓された雲切新道を下る。仙人谷を下る旧道は、雪渓と谷の崩壊で事故が多発した超悪路だったらしいが、雲切新道も急な尾根の下りが延々と続く。それでも、要所にはハシゴと鎖、ロープが随所に掛けられていて、作った人の苦労が想像できる。眼下に黒部川が見えてからが、また長かった。

 丸太橋を渡り、最後にも長いハシゴを下りると仙人谷ダムへ。ダムの堰堤が雲切新道と日電歩道の分岐だった。今日の幕営地・阿曽原までは下流へ続く管理道を進む。ダム管理事務所の扉を開けてトンネルを抜け、黒四発電所作業員を運ぶトロッコ軌道を渡り、今度は地熱で熱いトンネルを抜けて外へ出た。すぐ隣には人見寮という鉄筋4階建ての建物があった。こんな山奥にこんな大きな鉄筋の建物があるとは驚いた。

 ここからまた地獄の登り返しがあった。再び急斜面を下ると阿曽原温泉の屋根がやっと見えた。ふ〜長かった。着いてすぐに乾杯した黒ビールは極旨で、テントを張ったあとには、いよいよ極楽の露天風呂へ。まったり〜と疲れた体を癒す。さぁ、明日は下ノ廊下だ!。



9/24 阿曽原温泉800m(5:45)→仙人谷ダム(6:40/7:00)→東谷吊橋(7:20)→半月峡(8:10)→
 作廊谷合流点(8:20/8:25)→十字峡(9:00/9:20)→白竜峡下(10:20)→
 白竜峡上(10:30/10:40)→黒部別山谷(11:05/11:50)→鳴沢小沢(12:50/13:00)→
 内蔵助谷出合1360m(13:50/14:00)→黒部ダム下(14:50/15:05)→黒部ダム1550m(15:40)
<天候:晴れ>

 いよいよ3日目、今日はメインの黒部川下ノ廊下へ向かう。昨日の道を戻って、仙人ダムからの日電歩道に入る。正面には落差100m以上もあろうかという雲切谷の滝が見える。ダム上を右岸に渡って、車道のトンネルを抜けると、コンクリートの構造物があったが、トロッコトンネルを掘るための工場跡だろうか?

 東谷吊橋を渡ったら、いよいよ下ノ廊下だ。橋の看板には、ここから黒部ダムまで15.6qの表示がある。対岸に渡るなりいきなり急坂、その先には垂直の壁を掘ったヘツリ道が見える。すごいのひと言。遙か下にS字峡、次は半月峡を見ながら、ヘツリ道を行く。まだ、整備が終わっていないので、所々桟橋が壊れたり傾いたり、壁に張られた番線も切れたままと、うっかり余所見をすると落ちてしまうので、それなりに集中して歩く。

 途中で、関西電力から整備を委託された作業員が足早に抜いていく。毎年、下ノ廊下の整備が完全に終わるのは10月半ば過ぎ。10月末には雪が降るから、また来秋に修繕に入る、の繰り返し。でも、毎年一度は完璧に整備しておかないと、次の年は整備が間に合わず結局は通れないままとなってしまう。まだこの先は整備中で危険な場所もあるので、十分に注意して通行してくださいとアドバイスされた。

 ほどなく十字峡の吊橋を渡る。あの十字峡に来たんだと胸が躍る。剱沢を渡った広場の先に見晴台の看板があって崖のような斜面を降りると、大きな岩の上が見晴台となっていた。右が棒小屋沢、真ん中が黒部川、左からが剱沢と本当に十字路になっている。この場所に来られて満足だ。棒小屋沢は上流で黒四発電所に水を引いているので、水量が少ないらしい。

 まだまだ先は長い。休憩もそこそこに上流へ進む。側壁からの落ちる飛沫を浴びる場所が数カ所あった。沢の横断もあるので、雨が降ったら岩が滑りやすいだけでなく、沢の渡渉も厳しいだろう。今日の好天に感謝。一昨年10月に崩落した斜面に作られた桟橋は傾いていたが、恐怖感はなかった。

 広河原を過ぎると、だんだん黒部の流れも狭くなってきた。いよいよ、核心部の白竜峡だ。300mはあろう岩壁が垂直に落ち込み、その壁を幾本もの滝が白い急流に落ちている。まさに秘境・黒部川らしい景観だ。行く手には残雪(1週間後にやっと消えたらしい)が道をふさいでいる。この氷と化した残雪を高巻くためのロープが張られているが、不安定な足場で慎重に登下降する。白竜峡はオーバーハングした壁に道が掘られ、番線がないと嫌らしい場所もあった。

 白竜峡を抜けて広場になった場所で、ダムから下ってきた登山者と初めてすれ違う。今日下っていたのは平日とあって、5,6パーティ15名くらいだった。黒部別山谷出合いには、垂直の壁に垂らされたロープで降りる。安全地帯なので昼食を取るが、すぐ頭上にある別山谷のスノーブリッジはまだ崩壊したばかりだ。

この先もまだまだ大ヘツリが続く。雪崩跡の雪の上には熊の死骸が横たわっていた。春の大雪崩でやられたのだろうか。恐るべし黒部。鳴沢小沢の滝を過ぎて、棒ノ木平まで来ると谷も穏やかになった。小尾根を巻くと内蔵助谷出合へ。見上げる丸山東壁の迫力はすごい。ここまで来れば赤沢岳も見えて、黒部ダムまであと少し。小さなアップダウンを何度も超えると、黒部ダムが見えた!!。登った者しか味わえない感動だ。

 この巨大なダムを造るため、大正末期から昭和初期にかけて電源開発調査の目的で造られた旧日電歩道。改めて、先人の偉大さが分かった。橋で右岸側に渡り、最後の地獄坂を登る。いい加減、嫌になった頃に駅入口の扉が見えた。扉を開けて入れば、アルペンルートのバスが通る車道だ。

 阿曽原からダムまでは18q、立山三山から内蔵助平、ハシゴ谷乗越を越えて剱沢、仙人山から阿曽原へ、3日間でトータル50q超は歩いただろうか。今回は天候にも恵まれて、剱岳と素晴らしい黒部川の景色も存分に楽しめ、とても充実した山行だった。(宮田記)