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白峰南嶺縦走

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山域山名:南アルプス・白峰南嶺、伝付峠、黒河内岳、白河内岳、広河内岳
期  日:2015年10月10日(土)〜12日(月)
参 加 者:L宮田、福田(計2名)

行動記録:
10/10 奈良田(6:35)=バス=伝付峠入口500m(6:54/7:15)→
広河原・田代発電所850m(8:20/8:30)→八丁峠(9:15/9:30)→
保利沢小屋1310m(10:15/10:25)→伝付峠水場1920(12:45/幕営)→
伝付峠展望台往復<テント泊>
<天候:曇り>

 東京新聞「岳人」廃刊時に編集部が『岳人100ルート』で“静寂のロングトレイル”と紹介した白峰南嶺。今夏に農鳥岳山頂から南下する長大な横たわる山稜をみて、絶対に歩いてみたいと思った。さっそくこの秋の三連休にそのチャンスを得て、まさしく言葉どおり、静かな南アルプスの大展望ロングルートをトレースしてきました。

 夜中に奈良田入りして、第1駐車場で仮眠。バスが3便しかなく下山時間を楽にするため、初日に奈良田から伝付峠入口までバスに乗る。他に乗客はなく、運転手さんと奈良田の話しを聞かせてもらった。伝付峠入口で下車。登山口は橋を戻って、左手の駐車場奥のゲートからだ。その脇には糸魚川−静岡構造線の案内看板があった。そう、この辺りは大断層が早川の真下を通っているので、南アルプスが急峻な山稜をしている訳だ。

 ゲートすぐ右手にある新倉の湧水で喉を潤してから出発する。しばらくは舗装された林道、昔はヘリポートまで車が入れたらしい。落石と荒れた林道を行くと、田代発電所入口へ。このまままっすぐ行くと旧道だが、斜面崩壊で通行止めなので新道を目指す。登山道に入ってすぐに渡渉する沢は大雨で荒れていた。新道が通る八丁峠へは、正面のガレ場の右岸側尾根に付けられているが、これがとてつもない急傾斜と両側がスパッと切れて、フィックスロープがたくさん張られて、まったく気を抜けない道だった。

 登り着いた八丁峠には廃屋跡があった。旧道が通れた時代から、このルートは山師の道だったのだろうか。峠から道は、内河内川に向けて下る。最初の渡渉点には、立派?な木橋が架かっていた。川沿いに付けられた道は、いにしえの風情たっぷりだが、大雨の影響で、小沢を渡る橋は横を向いていたり、落ちていたり、朽ちたままもあり、道自体が崩れていたりと、ここもまったく楽をさせてくれない。

 2段の滝を過ぎると、東京電力管理小屋。周辺には資材が至る所に放置?されている。その上流にある取水堰までくると、木々も次第に色づいてきた。小滝の下が右岸側に渡り返す2回目の渡渉点だが、深い水流に所々出ている岩もヌルヌルと怪しげな感じ。靴を濡らしたくないので、石をいくつも放り投げて適当な足場を作ってから渡る。

 再び道は右岸を行き、アザミ沢を渡渉をすると伝付峠尾根下にやっと出た。沢の流れの脇で、紅葉を眺めながらのんびりと昼食タイム。樹林帯には作業小屋?の残がいがあった。尾根道はジグザクに作られているが、これまでのような悪場はなく、いいペースでグングン登れる。ほとんど人が通らないので、倒木の苔もまったく踏まれていない。尾根を境に北側にはからまつの人工林が植えられていて、看板には昭和47年植林とあった。

 稜線が近づくと伝付峠の水場に出た。晩秋の渇水期なのに水量は豊富だ。すぐ隣にテン場があったのでここで幕営とする。設営後、伝付峠まで散歩に出掛ける。途中の笹原からはドカーンと富士山が大きい。伝付峠に出ると、立派な林道が通り、脇には朽ちたトイレ。峠を下りれば二軒小屋に通ずるこのエリアは、昭和の時代に列島改造とやらで山林開発した名残がたくさん見られる。

 峠周辺がちょうど紅葉の見頃で、楽しみながら林道を歩いて、北側にある展望台に向かう。切り開きされていて見事な展望台からは、正面に荒川千枚岳と丸山、奥に悪沢岳、左手に赤石岳、兎岳と続き、聖岳の北斜面には雪が残っていた。しばらく南アルプス南部の名峰を眺める。

 テントに戻って焚き火開始。ほとんど人が入らないので、薪はすぐに集められた。暗くなるまで赤い炎を眺めて、たっぷり暖まった。明日は寒気を引き込む低気圧が接近、通過するので荒れる予報が出ているが、どうなるか。





10/11 午前荒天による停滞…伝付峠水場(12:20)→伝付峠1990m(12:30)→
西別当代山肩(13:30/13:40)→広場(14:05)→奈良田越林道終点1970m(14:40/15:00)→
白剥山2237m(15:45)→白剥山北方稜線ビバーク地2290m(16:00)<テント泊>
<天候:雨のち曇り、終日強風>

 予報どおり雨は夜半から降り初めて、明け方には本降りとなった。とても行動できる天候ではないので、そのまま寝ることにする。午前9時を過ぎても降り続けていたが、さすがに寝てられなくなったのでとりあえず寝袋を出る。朝食を取って、やることもないのでラジオを聞きながらゴロゴロするしかない。ちなみに、この白峰南嶺は、携帯(Docomo)がバッチリ入るので、ヤマテンや気象庁の情報がリアルタイムでチェックできたので非常に助かった(伝付峠と白剥山周辺はLTE受信でした)。昼頃には雨域が抜けそうで、午後は行動できそうだ。この半日が動けるかどうかで、広河内岳まで行けるか、黒河内岳(笹山)から奈良田に下山するかの分かれ目だ。

 早めにランチして、テント撤収して出発。富士山もおぼろげに姿を見せていたが、悪沢岳は雪雲に覆われ、雲間の斜面には新雪も見える。空は鉛色の曇天で、時折、ゴーという烈風が吹き抜ける。展望が開けると、きれいな紅葉が回りに拡がり、先には今日辿る長い林道と遠くには黒河内岳の山容が見える。しばらく行くと、古い林道は崩落しているので、稜線東側に新しく作られた迂回林道を行く。昔は伐採と造林事業だったらしいが、この時代に何のための林道かはまったく不明だ。

 稜線に付けられた林道は至る所で崩壊している。大きく崩れた場所には迂回の登山路が崩落斜面上に付けられているが、落石に注意すれば問題ないのでそのまま通過する。平坦地の林道はのり面から崩れた土砂が道を埋め、平場には幹を太くした樹木が立派に生えている。人の手が入らないと、こうして自然に帰るのだろう。林道が大きく逆戻りすると、作業所の鉄骨が散在している奈良田越えに到着。こんな山奥に産業廃棄物(鉄骨だから有価物というかも?)が放置されたままでいいのだろうか?。大井川東俣流域もそうだが、社有林といえど、隣にきれいな看板立てている某社のスタンスはいかに。ちなみに南アルプス国立公園は、山頂付近の特別保護地区を除いて、社有地のほとんどが規制されていない。

 奈良田越えで単独の若者と話す。茅ヶ崎山岳会に所属する彼は、農鳥岳から塩見、蝙蝠岳を越えて、転付峠から笹山までの南嶺をトレースして、明日、奈良田に下山するという。とても誠実な若者で、将来、きっといい山ヤになるだろう。三連休に白峰南嶺をトレースしたのは、我々とこの若者だけだった。

 奈良田越えからは、鬱蒼とした森のなかの登山道をテープを見落とさないように進む。急斜面を登り切ると白剥山山頂に出た。16時になったので、暗くなる前には今日の幕場を探さなければならない。下った鞍部にちょうどいい適地があったので、そこにテント設営する。ここなら強風でテントを飛ばされることはないだろう。樹間から伝付峠方面を眺める。悪天の一日だったが、ここまで行動できてよかった。明日は、いよいよ南嶺のハイライトだ。



10/12 白剥山北方稜線ビバーク地2290m(5:40)→窪地(6:30/6:40)→
黒河内岳(笹山南峰2717m(7:30/7:40)→笹山北峰2733m(7:50/8:05)→
白河内岳2813m(9:00/9:15)→大籠岳2767m(9:50/10:00)→池ノ沢コル(10:40)→
広河内岳2895m(11:05/11:55)→大門沢下降点2830m(12:20/12:40)→
2150m(13:40/13:50)→大門沢小屋1720m(14:40/14:45)→早川水系発電所1120m(16:15)→工事現場(16:30/16:40)→奈良田第一発電所890m(17:00/17:25)=バス=奈良田(17:30)
<天候:快晴>

 今朝は冷え込んで0℃。夜中じゅう、強風がフライを叩く音であまり眠れなかった。今日は長丁場、日の出前に気合いを入れて出発する。30分ほどで樹林にも陽が差してきた。今山行はじめての太陽だ。ルートは比較的明瞭だが、時々シャクナゲの藪を漕ぐ。足下には先週積もった雪が少し残っていた。

 鬱蒼とした樹林からいきなりハイマツ帯に出た。2800mラインから上部が雪化粧した荒川岳と塩見岳、そしてバックには雲海に浮かぶ冨士山。最高の絶景だ。目指す黒河内岳(笹山南峰)へのルートは、稜線の西側に付いている。テープが枝に巻かれているが、分かりづらい場所多く、ガスっていると見失うだろう。笹山南峰直下でルートは稜線の反対側へ乗り換える。南峰直下には明るいテン場があった。

 笹山南峰の頂きからは、白峰三山がまぶしい。なかでも北岳はひと際白かった。南峰から北峰までは、かなり下ってから登り返しだ。登り着いた北峰は、白峰南嶺で一番の展望台だろう。南アルプス主稜線はもちろん、鳳凰三山の奥に八ヶ岳から奥秩父連山、富士山の右手には伊豆半島と、360°の大パノラマを満喫する。展望の稜線を進み、白河内岳南面のゴーロ帯へ。地図には迷いやすいと書いてあったが、広い平坦地に特徴のない岩とハイマツが斑状に拡がり、案の定、ルートを見失って白河内岳直下で藪を漕いだ。

 白河内岳山頂からは、8合目から冠雪した冨士山がひと際輝く。北方には南嶺の起点、広河内岳の全容がやっと見えた。大籠岳まではこれまでと変わって、二重山稜の広い稜線。快晴、そして大展望の、誰もいない静寂の稜線、こんな素晴らしい稜線散歩があるだろうか。稜線東側の窪地は、風も当たらずテン場に絶好だろう。

 コルから池ノ沢を見下ろす。池ノ沢池は沢が右に折れた少し先あたりか。次回にはぜひ訪れてみたい。コルから広河内岳の急登になった。さすがに疲労が蓄積して、最後は辛かった。やった〜広河内岳の頂きだ。巡ってきた南嶺を眺める。ここまでホント長かったが、すばらしい縦走路だ。山頂は強風で寒いので、直下東側で富士見ランチの贅沢を味わう。

 広河内岳からは岩稜のアップダウンで大門沢下降点へ。我々と入れ違いで白峰三山縦走2名が下っていったが、今日会った登山者は結局これだけだった。大門沢に向けて整備された道を下る。大門沢は赤と黄が競うようで紅葉の真っ盛り。大門沢小屋は無人で、ご主人のアクシデントがあって例年より早く小屋閉めしていた。小屋からの下りは、夏の時よりも長く長く感じた。林道を歩いて、第一発電所からは広河原からのバスに揺られて奈良田に戻った。

 今日一日だけで、歩行距離21.5q、累積標高差+1747m、−3176m。3日間トータルでは、距離43.8q、標高差+4898m、−4559m。秋の3連休、静かな南アルプス白峰南嶺を満喫しました。(宮田記)