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快晴の大キレット踏破


【個人山行記録】



◎山域山名:北アルプス・南岳(3032.9m/長野県松本市)、北穂高岳(3106m/同)
◎期日:2015年9月21日(月)〜22日(火) ※同行者は20日も
◎参加者:2人 ※同行者は会員外
◎行程 ※―交通機関、…山中の徒歩
【20日】 晴れ
A/都内の自宅−〈A車〉−沢渡駐車場―〈バス〉−上高地(S/1505m)15:00…
横尾(G/1620m)17:00                     ※行動2時間
金子/都内の自宅−新宿駅・西口バスターミナル22:30―〈高速バス〉―

【21日】 晴れ/曇り
金子/―〈高速バス〉―上高地(1505m)5:20〜(登山届提出、荷物預け)〜6:10(S)…徳沢7:25〜7:35…横尾8:15
2人/横尾8:30…槍沢ロッジ(1820m/15℃)9:40〜9:55…大曲(2094m)10:45〜10:55…天狗原分岐(2348m)11:45〜12:00…天狗池(2510m)12:40〜13:00…2740m付近14:00〜14:15…稜線分岐(2950m)14:55…南岳15:15…南岳小屋(2970m/5℃/G)15:30                ※単純標高差1528m/行動9時間20分(金子)、同7時間(A)

【22日】 快晴
朝食5:00〜日の出5:30〜南岳小屋6:00(S)…〈大キレット〉…最低コル(2748m)7:10〜
7:25…長谷川ピーク(2841m)…2950m付近9:30〜9:35…北穂高岳10:05〜10:45…
〈南陵〉…涸沢ヒュッテ(2309m/20℃)12:40〜13:10…本谷橋14:05〜14:15…横尾14:55〜15:00…上高地(G)金子16:45、A17:45〜18:20−〈シャトルバス〉−沢渡駐車場−〈A車〉―せせらぎの湯−松本IC−〈中央道/渋滞〉―都心 翌2:00
※単純標高差1601m/行動10時間45分(金子)、同11時間45分(A)

 「大キレット」という言葉に畏怖を覚える人は多いのではないだろうか。歩いてみると、大きな恐怖を感じることはなかったが、それは快晴というお膳立てがあったからだ。登山歴20年で初めて足を踏み入れた。蓄積があってこその「無事の下山」だった。山への「畏れ」を忘れてはならないと感じる登山だった。
 同行者も大キレットは初めてだ。ただ、一般路の縦走経験は豊富で、初級の雪山にも行くベテラン。慎重に通過すれば問題ないと考えた。同行者は体力を温存するため、1日早く上高地入りした。だが、連休に加えて事故も重なってひどい渋滞に巻き込まれ、横尾に着いたときには夕闇が迫っていたという。
 自分は新宿を深夜バスで出発。間違えて割高のグリーンカーを予約してしまったのだが、結果的には睡眠時間の確保につながった。上高地からは準備運動を兼ねて飛ばし、2時間弱で横尾に着いた。
 同行者と合流し、南岳まで標高差約1400mの登りに向かう。天狗池に至る頃には稜線には雲が広がってきた。ただ、幸運にも槍ケ岳の穂先は顔を出してくれ、池に映る有名な絶景を望むことができた。南岳直下の尾根では鎖とはしごを越え、稜線に着いたときには槍から穂高にかけては濃いガスの中だった。
 南岳小屋は、やはり連休まっただ中とあって満室と言われた。カイコ棚式の部屋は、1つの布団に2人の割り当てとされたが、互い違いで寝ることで苦にはならなかった。夕日も落ちた午後6時半ごろ、予約なしに訪れた若者がいたようで、小屋のスタッフがかなり強い口調で対応していた。槍岳山荘が満室だからと暗い中を歩いてきたようだった。「来る者拒まず」とはいえ、どこまでが「お客様」なのか、難しいのだろう。
 翌朝、上空には一点の雲もない。30席の食堂は先着順のため、朝5時からの朝食に4時20分ごろから同行者と交代で並んだ。朝焼けにこれから歩く岩稜が映える。ヘルメットを被って出発。小屋から南下する登山者は多かった。想定外だったのは、台湾からの20人規模の団体と時間帯が重なったことだ。小屋に中国語を話す集団がおり、スニーカーもいたので、まさか大キレットに行くまいと思っていたが、そのまさかだった。ヘルメットは全員着用し、リーダーらしき人物に「ここは日本でも最難クラスのルートだが」と英語で言うと、その認識はしていた。案の定、長谷川ピークから先の核心部は、簡単な岩場を乗り越えるのにやっとの女性もおり、大渋滞になった。「安全な場所で他のパーティーを先に行かせてほしい」とも伝えたのだが、パーティー全体が長く伸び、我々が抜かしたのはA沢のコルだった。長谷川ピークからは同行者とは念のため8ミリロープでアンザイレンしたが、おかげで慎重に歩くことにつながった。
 滝谷を右に見ながらの登り返しは落石が怖かった。先行する人からも直上のルートが死角のようになっているから注意してほしい、と声が飛ぶ。実際、ルートを横切る落石にも遭遇した。そして、小屋を出てから4時間。北穂高小屋に無事についた。このボリュームがやはり大キレットの魅力でもあり、難易度を上げる由縁だろう。振り返ると、歩いた稜線が一望できた。やはり核心部は北穂高側の半分だ。印象としては今回とは逆ルートの方が、慎重な下りを求められるために難易度が高いのではないかと感じた。
 昨秋の穂高山行でも、北穂高では快晴の絶景だった。ちょうど1年後、ほぼ同じコンディションに恵まれた。9月前半の関東や東北の水害を思えば、運の良さを強く感じた。
 涸沢まではノンストップで下った。不安定なキレット直後とあって、南陵が簡単に感じてペースが自然と上がった。涸沢の紅葉は見頃に入りかけた頃だろう。去年よりも美しさが増していた。
 涸沢からは帰りの時間をにらんで、ひたすら下るだけだった。横尾に着いた時点で午後3時。預けていた荷物の受け取りの締め切りが午後5時だったことを思い出し、往路に続いて上高地までの道を2時間弱で飛ばす羽目になった。疲れた体にはさすがにこたえた。同行者にはゆっくりと別行動で歩いてもらった。驚いたのは、沢渡に向かうシャトルバスの列が河童橋まで伸びていたことだ。午後5時発だった最終バスは、「人がいる限り運行」となり、我々が乗ったのは午後6時20分だった。
 下山後は新島々手前の日帰り温泉「せせらぎの湯」に立ち寄ってから中央道へ。小仏トンネル付近の大渋滞にはまったので、途中のPAで休憩をして時間調整をしながら、日付の変わったころに都心に着いた。
(記・金子)