熊谷トレッキング同人 国内山行記録
トップ 海外トレッキング 国内登山 山スキー 入会のご案内 お問い合わせ

仙丈ケ岳、地蔵尾根

アルバム  ブログ
山域山名:南アルプス・仙丈ケ岳、地蔵尾根
期  日:2015年11月21日(土)〜 22日(日)
参 加 者:CL宮田、SL新井久、橋本健、菅谷

行動記録:
11/21(土) 北本(4:50)=道の駅長谷=市野瀬登山口1130m(9:00)→1450m(9:45/9:55)→林道水場1780m(10:55/11:15)→松峰巻道1970m(12:00/12:20)→松峰小屋1970m(13:15)【泊】
<天候:晴れ>

 11月後半のこの週末は、毎年待ち遠しい。何故なら山スキーのシーズンスタートで、立山室堂に入山するのが恒例だからだ。ところが、今年は生憎の雪不足で急遽中止。入会後から欠かさず参加させて頂いていたが、今回は期待空しくキャンセルとなった。
さて気分新たにという事で、CL宮田さんが以前から温めていた、地蔵尾根を避難小屋泊で仙丈ケ岳に挑戦することとなった。雪不足とはいえアルプスは既に積雪期。稜線には厳しい場所もあるだろう。冬山装備を整え、土曜日の早朝、登山口のある高遠の市野瀬を目指した。途中、昨夜から現地入りしている新井久さんと道の駅で合流。国道152号から外れて、集落内の細い道を案内看板の指示通りに進んで行くと、登山口手前の駐車場に到着した。

この駐車場は地元の方が私有地を無料開放してくださっているとの事。雑草も刈上げ、良く整備されている。5〜6台は停められそうだ。手作りの案内看板ポストの中に登山ノートもある。我々以外に車はないが、奥から詰めて、有り難く利用させていただいた。

登山口まで林道や農道を少し歩く。仙丈・孝行猿の案内看板に導かれて進むと、すぐに落ち葉で覆われた歩きやすい登山道になる。里山の公園の遊歩道のような登山道で、しばらく行くと孝行猿の遺跡が出て来た。その後も登山道は緩やかで歩きやすいが、林道に出たり登山道に戻ったりを何度も繰り返す。背中の荷物がギッシリと重い。汗をかかない様に歩くのはなかなか難しい。時折、地図とGPSで現在位置を確認するが、地図上の登山道から外れていることに気が付いた。ピンクテープの目印は明瞭でしっかりある。さらに案内看板もある。さて?…。数日前にネットで山行記録を確認すると、分かりづらい登山道で苦労した登山者の記録もあった。我々は素直に案内看板と目印に従って進んだ。結果、問題なし。

およそ2時間で1780mの水場に到着。大好きな南アルプスのおいしい水を飲んだ。今回は皆、登山口からから2日分の水を5L以上担ぎ上げた。自分は汗かきなので7L。松峰小屋の水場が冬季で使えるか分からないからだ。再びだらだらと長い登山道を進む。緩やかで歩きやすいが飽きてくる。何度も林道をクロスオーバーすると、突然林の中に建設中の林道やブル道が出てきた。登山道を分断したり並走したり。深山に似合わない機械音に目を向けると、伐採ユンボやクローラダンプが何台も重低音を響かせ作業している。凄い光景だ。樹林の間から遠く中央アルプスの綺麗な稜線も見え感動したが、重機の轟音に気を取られてしまう。興ざめだが、ちょうど作業現場が昼休みで静かになったので、我々も松峰の巻道でのんびり昼食を取った。

やはり食べると元気になる。再びトラバースが続く巻道を進み、小さなピークをいくつも越えるが、なかなか高度は稼げない。防寒具にアイゼン、ピッケルを準備して冬期のフル装備だが、今日はポカポカ陽気。秋晴れの様な好天は大歓迎だが、顔から汗が噴き出して止まらない。しばらくして緑の苔に覆われた森になると、松峰小屋の立派な看板が出てきた。そこから不明瞭な道を100m程下った所に無人の小屋がある。

既に先客が1パーティ居た。挨拶を交わして自己紹介。茂原市の老舗山岳会の方々3名。同じコースで仙丈を詰めて、明日は北沢峠で天泊。翌日戸台経由で下山するらしく重装備だ。松峰小屋は28uくらいの平屋建てで、入口扉から対面の小さなサッシ窓まで土間が続き、その両側に板の間がある。谷側の板の間は、床下に大岩があるのか盛り上がって斜めになっている。そこで寝るのはきつそうだ。壁も薄いので、確かに室温も外気温も変わらなそうだ。トイレはない。着替えと宴会の準備をしている間に、宮田さんと新井久さんが少し下った所にある水場の偵察に出かけた。幸い水が出ていて利用できるとの事。水が豊富にあるのは有り難い。まだ日の明るいうちから宴会を始め、大いに盛り上がった。暗くなる頃にはかなり気持ち良くなっていた。月明かりの綺麗な夜で、冷え込みはそれ程ではなかった。



11/22(日) 松峰小屋(6:10)→地蔵岳肩2330m(7:00/7:10)→コル2422m(7:55/8:10)→2840m(9:05/9:20)→馬ノ背稜線(9:40)→仙丈ケ岳3032m(9:50/10:05)→コル2422m(11:00/11:15)→松峰小屋(12:25/13:15)→林道水場1780m(14:30/14:45)→市野瀬登山口(15:40)
<天候:曇り>

 4時半起床。夜中に何度か目が覚めたが、温かくグッスリ眠れた。おかげで日頃の寝不足から解放された。荷物をまとめながら、湯を沸かし朝食の用意をする。今日の行程は長いので、しっかりタンパク質の豊富な食事をとる。使用した寝具や着替えなど、不要な荷物は帰りにピックアップするので小屋の隅にまとめてデポ。厳しい稜線歩きを想定した装備を整え、再度パッキング。荷揚げした水の重量が減ったはずだが、何故か背中にずっしり重い。昨晩同室した茂原の3名に15分程遅れて小屋を出発。気温は氷点下ではないが、身体がまだ温まっていないので寒い。

 松峰小屋を出てすぐ樹林帯の急登が始まる。程無く重装備の先行パーティに追いついた。先ほどまでの寒さが嘘のように、全身火照ってくる。苔に覆われた樹林帯を抜け、少し高度を稼ぐと、中央アルプスや南アルプス南部、正面左手には鋸岳や甲斐駒ケ岳の雄姿が顔を出した。同時に冷たい風も受け始める。冬用グローブをしているが指先は冷たい。温度計は氷点下になっている。霜柱も出てきた。風をもろに受ける稜線に出る前に、防寒用の装備を身に着ける。2736mピーク直下の灌木帯の九十九折を登り詰めるとハイマツの稜線に出た。そして、さらに乾いたガレ場を進む。

 積雪はないが、冬のアルプスの寒風の制裁を受ける。眼前には我々を待ちわびていたかのように大仙丈西面の岩壁が現れた。素晴らしい景色だ。ハイマツの稜線には所々岩場や切れ落ちたトラバースもある。無雪期は一般登山道と変わりがないが、冬期は積雪と寒風で凍り付くのが容易に想像できる。「雪が無いな〜」と不満げな先輩方を尻目に、経験の少ない自分は内心ホッと安堵した。足元が滑らなければ、後は体力勝負。ガンガン歩いて登るだけ。そして、これが一番きつい。強い寒風を受けているにもかかわらず、汗が顔や背中を滴り落ちる。西風およそ10m。全身に受けるアルプスの寒風を蹴散らし、気合を入れて、頂上まで一気にラストスパートをかけた。

 本日貸し切りの頂上からの景色は、期待を裏切らなかった。すぐ目の前に甲斐駒と鋸岳。鳳凰三山、白峰三山、奥には富士山も顔を出す。写真を取りながら眼下の景色を楽しむ。しばらくすると、アルプスの冷たい風が全身を刺し始めた。空を見上げると西から黒い雲が流れてきた。上空の風はかなり早そうだ。予報通りの悪天の兆しか。さあ、長居は無用。あとはもと来た長い地蔵尾根を下るのみ。

稜線で茂原パーティとスライドした。きっと北沢峠への稜線歩きも素晴らしいだろう。我々も松峰小屋まで一気に下りた。高度を下げるにつれ気温も高くなる。ハイペースのため汗が流れるが、ペースを下げると寒くなる。小屋で温かいコーヒーを飲み、一時間ほど休憩。デポしておいた荷物を回収して、後半戦の長い樹林帯歩きへと進む。ため息が出るほど長いトラバースといくつものアップダウン。途中、重たい荷物で橋本健さんのストックが折れてしまうハプニングもあったが、予定通り登山口にたどり着いた。

下山後にph9.6の高遠のさくらの湯で汗を流し、美味しいおそばを食べて帰路につく。ネットとラジオで高速の渋滞情報を確認。やはり中央道はダメそうだ。驚いたことに、長野回りもヘリの墜落事故で渋滞。下山後も長いトラバースが待っていた。(菅谷記)