山スキー記録    熊谷トレッキング同人

  ‘浅間の特大斜面を滑降す’ 浅間山


山域山名:浅間山・東斜面(群馬県)<見える山>

期  日:2007年2月25日(日)
参 加 者:宮田、木下(計2名)

行動記録:北本(5:30)=峰の茶屋1400m(7:45/8:15)→小浅間山分岐1570m(8:42/8:50)→
 東尾根1790m(9:25/9:40)→2260m(11:00/アイゼン/11:20)→2380m(11:40/スキーデポ/11:50)
 →外輪山1440m(12:00)→山頂直下2510m(12:20)→東前掛山2450m(12:40/12:45)→
 スキーデポ2380m(12:50/昼食/13:30)〜<東面カール滑降>〜1850m(13:50/14:05)〜
 鬼押ハイウェイ1390m(14:40/14:50)→峰の茶屋(15:30)

(天候:快晴後一時霧)

 過去に例をみない大暖冬の今年であるが、今朝の都心は0.2℃、北本も−2℃まで冷え込み、やっと真冬の気温となった。午前8時前に着いた峰の茶屋も−9℃とさすがに寒いが、積雪は約20pとかなり少なめ。地元長野の山スキーヤー6名が出発するところで、ほかにも入山者が数名いるようである。駐車場から見る浅間山は迫力十分で、登行意欲がそそられる。雪が吹き溜まった登山道をシートラーゲンで登り、約30分で小浅間分岐へ、ここからがいよいよ浅間山の本格的な登りが始まる。

 一昨日の低気圧による3pほどの新雪のおかげで、何とか小石混じりの砂礫を登らずに雪上を歩け、兼用靴が傷だらけにならずにすみそうだ。今日は都心でも7℃までしか上がらない予報のため、吹きっさらしの浅間山に備え北海道仕様の服装できたが、無風の東斜面樹林帯は快晴の太陽に照らされて暑く汗をかく。ほどなく森林限界上に出ると、草津白根から谷川連峰、尾瀬日光連山まで大パノラマが拡がる。見慣れない角度からの平標と仙ノ倉が印象的だ。熊谷から富士山のようによく見える浅間山であるが、関東平野は霞がかかり熊谷は目視できなかった。今冬は、冬型明けの翌日でもスッキリ晴れず、今日のように霞がかかることが多かった。

 ほぼ夏道に沿って高度を上げて行くと、強風が抜ける東尾根上は雪に砂礫、岩が入り乱れる感じに変わっていく。また積もっている雪もシュカブラや硬雪、ミラーバーンととても変化が激しい。積雪量も10〜20pほどで、これではとても東斜面は滑れそうにない。また、2千メートルを越える上部は岩陰やボール状となった吹き溜まりを除いて山全体がアイスバーンで、さすがは冬の独立峰・浅間山は厳しく、噴煙をたなびかせる本峰はとてつもなくデカイ。気になる噴煙は、北風に流されて南方に流されている。夏道が尾根をトラバースしている2260mでアイゼンを付けて東尾根上に戻り、雪がつかない2380m付近にスキー板をデポする。もうこの上は露岩と硬いアイスバーン斜面で、滑降は危険と判断したためである。

 その後もアイゼンのままトラバース気味に登って外輪山に立つ。ここまで随分と長く感じたが、峰の茶屋からここまで標高差は1100mほど。11月末の立山以降まともな登山をしていなかったからね、と二人で話す。ここから外輪山稜線上を北に向かい、本当の本峰頂上を東側から目指す。時折、硫黄の臭いを感じながら登っていくと、途中で喉の調子がおかしいことに気づく。さらに登って行くと、やっぱり喉が痛い。木下さんも喉が痛く、咳も出ると訴えた。視界も少しよどみ、タイミング悪くちょうど噴煙が西風に流されて我々の方に向かっていたようだった。このまま登っていくとひょっとしたら…?の不安を感じたため、残念であったがすぐに下りることにした。

 南斜面から湧いた霧に覆われた東前掛山でアイゼンを脱ぎ、尾根上の踏み跡を下ってスキーデポ地へ、ここまで来ると視界も回復した。風はほとんどないものの気温はまだ−6℃、とても寒い。午後1時であるのでこれ以上気温は上がらず、斜面の雪が緩むことはもう期待できそうもない。いよいよ滑降であるが、出だしはカリカリのアイスバーン。スキーブレーキのないスキー板の木下さんは、板を履くのにも苦労していた。この斜面で転倒するとどこまで落ちるか分からない。ターンをするごとに雪面をたたく音が響く。岩で板を傷付けないようにラインを選んで滑り、途中からは帯状となったシュカブラもあらわれる。標高100mほど下げて、北東斜面にある特大のボール状斜面に滑り込む。ウィンドクラスト気味のパックスノーになったが、この方が安心して滑れる。安全のため、斜度が緩く軟雪のある沢底を滑る。

 この北東斜面は標高差約1000m、斜度は一番緩いところでも約30度、それにしても広い広い大斜面だ。遙か眼下の鬼押ハイウェイを走る車が小さく見える。我々のすぐあとを6名パーティが続いていたので、きっとビューポイントに建つドライブインから壁のような斜面を滑り下りる我々を眺めてるに違いない。あまりのスケールに滑っても滑ってもなかなか近くならない。斜度が少し緩む1850mで斜面を見上げる。もう疲労と満足感いっぱいでおなか一杯である。ハイウェイまで滑り下りる途中に何度も何度も振り返ったが、浅間山がどんどん大きく、そしてそそり立つように見えてくるのが不思議であった。下部の樹林帯に入ると、密な植生と雨水が流れる沢地形でまるで迷路のような感じであったが、構わず滑ると猛スピードで車が走るハイウェイに出た。

 通り過ぎる車が「何だ?」というブレーキランプを照らすのを見ながら、道路脇をツボ足と一部スキーで滑って峰の茶屋までは約40分。久しぶりのしっかり登って滑った山スキーの充実した1日が終わった。


 浅間山は気温、風、雪質と非常に厳しい山ですが、時期と条件に恵まれれば豪快な山スキーが十分に楽しめる山です。それに熊谷からも近い。また行きましょう。(宮田記)