国内山行記録    熊谷トレッキング同人

雪上訓練in谷川岳西黒尾根
アルバム


山域山名:谷川岳西黒尾根(群馬県)
期  日:2008年4月6日(日)
参 加 者:A隊 CL南雲 SL宮田 駒崎、木下、木村
     B隊 CL浅見 SL大嶋 逸見、石川    (計9名)

《A隊の記録》

登山指導センター(6:45)→1010m(7:35/7:45)→1500m(9:00/9:20)→1800m(10:30/10:40)
→トマの耳(11:20)→オキの耳(11:35/12:15)→トマの耳(12:30/13:20)
→天神尾根1500m(14:00/14:20)→ロープウェイ天神平駅(15:00)

 登山指導センターに計画書を提出し、若干の打合せの後出発。取り付きから急登で最初から中々大変。雪は締まっておりトレースもついているので足が雪にはまる様なことはないが、この急登と寝不足なせいもあって最初はペースがつかめなかった。快晴で気温も高く、汗が吹き出す。急登が一段落した1000m付近で最初の休憩。後続のB隊の姿はもう全く見えない。

 ひと汗かいたのでここからはペースを取り戻し、快調に高度を上げる。木々もだんだんまばらになり、振り返ると白毛門から朝日岳・清水峠への稜線が美しく望まれ、正面には谷川岳本峰と一ノ倉の岩壁が迫力ある姿でそびえたっており、絶景にシャッターを切る。

 1500m岩峰のクサリ場を注意して越え、その先の岩峰の一つで2度目の休憩。

 ここから下る所は短いながら急で緊張する。ラクダのコルへの途中にはテントが一張り。よく見ると大宮労山のテントだ。これはどこかで徳重さんと遭遇するかな、と思っていたら案の定目の前を下山してきた4人パーティが徳重さん達であり、挨拶を交わす。GWの剣岳登山の訓練で来ているそうだ。徳重さん達とすれ違ったすぐ上の岩稜はその上の雪面に大きな亀裂があり直登するのが困難なため、マチガ沢側から回り込むようにして登った。ザンゲ岩までの急斜面の途中1800m付近で定時交信。B隊もガレ沢のコル付近で順調に登って来ているとの事。


 ザンゲ岩を越えるとトマの耳まではあと少し。11時の交信でオキの耳に足を延ばす事を伝え、程なく山頂に到着した。西側の展望も広がりまさに360°の絶景である。仙ノ倉山への稜線はもとより、先月滑った日白山も見えており、東側も遠くに至仏山や平ヶ岳・会津駒や越後三山まで見えている。トマの耳は混雑しているのでオキの耳に移動し昼食休憩とした。昼食後トマの耳に戻る。午後になり風がでてきて少々寒いが、その分午前中よりも景色がクリアになっており、B隊が到着するまで思う存分景色を楽しんだ。

 下山は天神尾根をとる。やわらかい雪面は勢いのまま下れて楽だが、所々にある亀裂とアイゼンの爪だけは引っ掛けないように注意した。熊穴沢避難小屋の先でB隊を待ちつつまた景色を楽しみ、最後にゲレンデtopで集合写真を撮り天神平へ下山した。 (木村記)







《B隊の記録》

登山指導センター(6:45)→鉄塔(7:15/7:30)→小休止(8:30/8:40)→ハーネス装着(9:20/9:40)
→ラクダのコブ(10:55/11:05)→小休止(11:25/11:35)→ザンゲ岩(12:20/12:35)
→谷川岳トマの耳(13:00/13:30)→→天神尾根1500m(14:20/14:25)
→ロープウェイ天神平駅(15:05)=熊谷市役所(18:15)

 10周年記念号に大嶋会長が、同人の目標の「より高く、より深く、より険しく」に、「より長く」を加えたいと書かれた。このところ自分でも体力の衰えを常に感じている。少しでも長く歩きたいと、初級冬山・谷川岳の雪上訓練・合宿には、積極的に参加したいと思っている。しかし、今回の谷川岳山行は、参加メンバーをみて、はたして私が参加していいのだろうかと、ずいぶん迷った。計画書に「ガレ沢のコルで、11時を過ぎていれば往路を引き返す」とある。これは、だれに言われなくても私のためのものだ。歩けない私が、ほかの三人に山頂を踏ませなくっていいのだろうか。ずい分悩んだ。家人にも「そんな事なら行くな」と言われた。前日の例会で、途中で引き返しメンバーに迷惑をかけても行こうと決めた。

 久々の早い出発だ。早くから目が覚めボーとしたまま車に乗った。こんなことで大丈夫だろうかと不安な気持ちになった。谷川岳ロープウェーPで、ビーコンとゾンデを受け取り、ああこれからだと身が引き締まった。登山指導センターに登山届を出し、すぐアイゼンを着けA隊が先行し、B隊は「鉄塔まで、ゆっくり行きましょう」と浅見先生の指示で歩き出す。黙々と歩いていると「コツ、コツ、コツ」と、姿は見えないがキツツキが木をたたく大きな音がした。鉄塔で一休みしてまた歩き出す。いい天気だ、暑くてあつくて汗が滴り落ち、サングラスをぬらす。周りに見える山も、どこまでも続く道も真っ白だ。休んでいる時はとっても気持ち良いが、歩き出すと途端に「あーあー、もうだめ」と泣き言が出る。途中でハーネスを付けたお陰で、どうにも足が持ち上がらない岩場では、ザイルで引き上げてもらった。やっとザンゲ岩までたどり着き、お昼を食べてこれから山頂へという時、無線が入り「頑張って登って来てください」に、つい「頑張れません」と大きな声を出すと、「分かってまーす」の声、その一言がとても気持ちを軽くしてくれた。

 A隊の皆さんは、トマノ耳、オキノ耳を往復して、私達が山頂に着くのを待っていてくれたのです。「ご苦労さん、頑張ったね」と迎えられ、とても嬉しかった。登った山、いつか登ってみたい山々の360度の展望を楽しみ、記念写真を撮ってから、久しぶりの天神尾根を、ロープウェー山頂駅に向かって歩き出す。

 何年か前、雪上訓練でザイルワークや雪洞を作ったのはこの辺だ。あともう少しだと、ヘロヘロになりながらもやっと下山できた。私にとって長い一日だった。でも、とても嬉しい一日でした。歩けて良かった。メンバーの協力のお陰で、あせることなく歩くことが出来ました。感謝、感謝です。何時までも若い人たちに甘えてはいけないとは思うが、出来ることなら体力をつけて、また参加したいと思っている。 (逸見記)





『谷川岳西黒尾根訓練山行の総括』

(浅見記)

 「ここ数年、4月の第1週に谷川岳天神尾根で、滑落停止などアイゼン・ピッケルワークを中心とした雪上訓練を続けてきました。使わないと忘れがちな技術なので年に1回でも練習しておくことは大切だと思います。しかし、会山行の多くが積雪期の山スキーと無雪期登山に分かれていて、積雪期のスキーを使わない登山がとても少なくなっている現状のなかでは恒例の雪上訓練が訓練のための訓練になっているように感じました。そこで、今年は訓練よりも実践という方向で西黒尾根から谷川岳に登り天神尾根を下るプランに変更しました。

 好天とメンバーのがんばりによって無事登頂を果たすことができました。最初から最後までアイゼンをつけっぱなしで標高差1200mを登り400mを降りたので、アイゼン・ピッケルを体の一部のような感覚で使いこなすためには、いい訓練になったと思います。谷川岳南東面の大展望と登頂の充実感も楽しめたことも収穫でした。今回のような山行で雪山を登る楽しさを多くの会員に知ってもらうことは大切なことだと思います。

 ただ、続けてきた訓練が今年はできなかったことが、今後の課題として残りました。山スキーは優れた登山の道具ですが、いざスキーが使えなくなったときに雪山から安全に下山するためにアイゼン・ピッケルの技術が必要です。多くの山スキーヤーの参加を期待しています。
 また、年間を通して多くの雪のない山に登っている会員にとっても、早春や晩秋に思わぬ積雪に出会うこともあるので、積極的に参加してほしいと思います。

 最後に、逸見さんが直前まで参加するか辞めるか迷われていたようですが、決断して参加してくれたことに感謝しています。二人以上で山に登る場合、体力、技術、スピードの違いが必ずでてきます。それらの条件をすりあわせ協力して、全員が安全に登り降りてくるようにすることも登山の醍醐味だと思います。逸見さんを始め、多くの先輩たちが情熱とたゆまぬトレーニングで登り続けていることは、熊谷トレッキング同人の誇りです。私たちはいつも、勇気をもらっています。また行きましょう。」