初めてのインド旅行

長 谷 川 有 二

もう20年も前になるが、初めての海外旅行でアラスカにスキー・ツアーに行った時、たまたま村越さんと大嶋さんと一緒になった。二度目は同僚の飯塚さんに誘われてネパールへトレッキングに行った。その村越さんも飯塚さんも最近はもっぱらインドに行っていると聞いて、インドはそれほど人を魅了するものがあるのだろうかとの思いがインド旅行をしてみたいと思う動機だった。

しかし、デリーにしてもアグラにしてもインドの都市の雑踏と喧噪と道路の汚物、物売りや物乞いの執拗さには少々閉口した。その上、日本人は騙しやすいのか、食堂でもタクシーでも免税店でさえもごまかそうとするので神経を使う。ノンビリ町を見学という訳にはいかない。それでも旅の最後の日にはオールドデリーとニューデリーを半日ずつ観光バスで見学したが、これは安心して見学できたし、ガイドも英語で説明してくれたし、なかなか親切だった。

町の中はあまり好きになれなかったが、都市から離れたところにある宮殿や寺院や砦やその跡は素晴らしいと思う。多くは高台にあり、広大で、眺望もよく、涼風のせいかそれほど暑さを感じさせない。有名なタージ・マハールは一日いても飽きることはないだろう。

デリーから一日がかりでマナリに着いた時はほっとした。森田さんは気さくな人だし、食事も日本食に近い物を出してくれたり、買い物の店を紹介してくれたりで、随分と助かった。ここに住んでいる人たちは純朴な感じだし、日本人に近い容貌の人達も多い。近くに温泉はあるし、日本にいるようで本当にノンビリできた。

一つ心配だったのは、高山病だった。高所訓練のための富士登山では、頂上直下までは登ったものの、その晩、頭痛と特に吐き気がひどく、苦しい思いをしたからだ。酒を飲んだのも症状を悪化させたようだ。高所では酒はダメだということを身をもって知らされた。

そんな訳で五泊六日のトレッキングは、予定の変更もあって少々心配だった。私の場合は二日目の夕食後、ちょっと腹の具合が悪くなり、発熱があった。三日目の朝は三十七度五分あった。その日は一日気分が悪く頭がぼんやりした状態だった。頭痛はそれ

ほどでもなかった。風邪の症状もないのになぜ熱が出るのか不思議だったが、後で森田さんに聞いたところ、発熱も頭がぼんやりする状態も下痢も全て高山病で、身体の弱いところに症状が出るとのことだった。四日目からは体調は戻ったが、この日までは雨で寒かった。特に休んでいる時は寒さが身にしみた。頂上のハムタパスも雨で展望がきかなかったのが残念だったが、五日目、六日目は好天に恵まれ、チャンドラ川に添って快適なトレッキングを楽しむ事ができた。全行程を通して高山植物は豊富であった。斜面一面に花が咲いている場所は数え切れない。雨季が花を見るには最も良い時期であるとのことだった。

無事トレッキングを終える事ができたが、途中、渡渉があったり、崖崩れがあったりで、危険なところもあった。帰りのバスも崖に落ちないだろうかと心配になったりした。山に登る限り、多少の危険は仕方のないことではあるのだが。

今回の旅行では、中心になって働いてくれた人達は旅行業者が行うような仕事を全てした訳で、大変な事だったと思う。この場で感謝とお礼を申し上げます。有り難うございました。

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