ゴチャまぜインドだぜ!

神 沢 隆 男

飛行機が着陸する時、かなり興奮していた。インドに来た、というよりも大陸に渡ったという気 持ち。ユーラシア大陸。大陸の大地を足で踏みつける。大きく鼻から息を吸う。第一声 は何にしようか。そんな事を前から考えていた。一人つぶやく(これが大陸か)でも実際 、いつ土の上を踏んだのか、わからなかった。なんかコンクリートの床を踏みし めても、それほどの感慨もなかった。そして一人感傷にひたるヒマもなく、私は先輩の 後についていった。

インドの町は、ゴチャまぜだ。町のきたなさがいい。昼間から人があふれている。し かもヤロウばかりだ。彼等は一体、何をしているのだろうか。職がないのだろうか。道 端でトランプしたり、ただ、集まっている。こちらをギョロギョロ見ている。注目され て、ちょっとうれしい。でもちょっとコワイ。ガキが三人よってきた。見るからに悪ガ キ。たまらなく挑発的だ。よくわからないシロモノを売りつけようとする。まったく、 しつこい。無視した。別に絶対買わんゾ!とか、こだわりはない。どうでもいいけど、 たくましさに感心。物乞いは少なく意外だった。初めは、かなり意識して目を背けてい たが、後になって彼等のしたたかさ、たくましさがわかってきて、非常識にも、うれし くなった。人間どんなことがあっても、けっこうやれる。日本では、飢え死にはない。 無責任、バカと呼ばれても、好きな事をやろうと私は決心した。また、神社で賽銭はで きなくなった。インドで1ルピーもやらなかったクセに、何の努力もしてない神社に1 0円もくれてやる訳にはいかない。賽銭したら、彼等に申し訳がない。それにしてもイ ンド人はエネルギッシュだ。日本人は無関心を装う事ばかり。

インドの男には日本人の彼女が多いらしい。まったく頭にきた。四人ぐらいのニーちゃ んから「私の彼女は日本人デース。」「北海道に住んでイマース。」「あなたの彼女 名前、なんデスカ。」よけいなおせわだ。でも、とりあえず「トウキョウ」「アイ ハ ブ ア ガールフレンド。」と笑ってみせた。むなしい。

マナリの町には白人が多い。白人コンプレックスとでも言うのだろうか、とてもカッ コいいと思ってしまう。若い白人ツアーリスト。本で読んだ事がある。ああいうのをヒ ッピーと言うのだろうか。よくわからないけど、勝手にそう思いこんだ。長髪またはボ ウズでインドの服でサングラス。バイクを乗り回していた。どうして日本人はカメラば かり首からブラ下げているのだろうか。チョップステックで、タバコをふかしていた白 人ネーちゃん三人組が印象的だった。なんかレズみたい。タバコの傾け方がカッコ良か った。

インドの女性はあまり見かけなかった。でも美形が多い。サンジャイ氏のおくさんが、 その中でも一番、美しい人だった。ボクの人生の中で、あれほど美しい人に出会った事 がない。これはさておき、サリーはオシャレだ。でもね、おばちゃんのヘソ出し、いや 腹出しファッションはやめてもらいたかった。インドの女性と話がしたかった。でも英語 ができなけりゃだめか・・・。

インドで色々考えたが、とりあえず世界を歩こう、と決心した。松本先輩が言った村 越先生の言葉「人格は読んだ本の量と自分の足で歩いた距離。」この言葉が忘れられな い。ちっちゃな日本でセコセコやってられない。世界に出よう。何も知らずに死んでし まうのは、かなりさびしい。インドのドデかい景色を見ながら、考えた。そうしたら無 気力ぎみだった生活にも、おのずとやるべき事が見えてきた。行動力のない自分に行動 力がほしい。

町を一人で歩いた時、とてもうれしかった。自分が成長した気分。一人で何とかなる。 自信が持てた。「インド帰りの男」勝手にそう呼んだ。

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