ヒマラヤは雨の中

島 崎 孝 氏

95年は6月から雨が降り続き、今年の夏は冷夏との予測であったが、しかし梅雨が明けると一転して猛暑となった。私達が日本を出発したのが8月9日であった。

今年の場合、日程の都合により87年に続き2回目のインドへの社会風俗歴史見て歩きの旅となった。前回はトレッキングが目的で都市部を見る機会がなく、デリーを観光タクシーで半日コースで見学した程度であったが、今年のインドでは同じコースを2日間かけてゆっくり見ることができた。フユマーンの墓、ラージガート、ジャスマジット、国立博物館そしてクトブミナール(夕方雨で再度見学した)どこも懐かしい所で、思い出しながらゆっくりと見ることが出来た。

8月11日、アグラ見学。目的はタージマハルで、この日は金曜日で入場料は無料で入ることが出来るので、見物人が長い列、中は超満員であった。アグラに行く途中はデリーを出ると小さい町や道の両側は何もなく荒涼とした土地があるだけだが、アグラに近づくと観光客相手の熊の曲芸・蛇使いなどを見ることが出来る。そして毎年繰り返している洪水の跡が見える。カトマンドゥからカルカッタへ飛行機で向かうときもはっきり大きく確認できた。

8月13日、ネパールへ。ホテルはアンナプルナ・ホテルである。乾期にはホテルの通りにある現王宮の後方にランタンリルン山群が見えるという。ネパールのイメージとしてエベレストのある国、仏教の国としか浮かばないが、動物公園サファリがあり、ポカラに行く途中にはバナナが豊かに実り日本と同じ田圃がある(実際には日本より稲の間隔が違う)。水も豊か、気候も寒くなく暑くなく感じる。ヒマラヤが見えることを期待したが、雨期のため山は見えなかった。しかしトレッキングでは見ることが出来ないネパールの都市生活や庶民の生活に接することが出来た。ガートでの女性の鮮やかなサリーの赤い色・沐浴・火葬(実際に火をつけ白い煙が見えた)、そして偶然見た車で運ばれてきた担架に乗せられてだらりと垂れ下がった足を見るなど驚くばかりだった。

またカトマンドゥでの狭い路地でのマチェンドラナード寺院の太鼓と鐘の音・煙・鳩・早朝からの参拝の人々。その熱心な姿を見ると、いったい何を祈っているのだろうかと考えてしまった。日本の小学校低学年くらいの子供も良く働いている。物売りの語学力に驚き、果物やスパイスなどを売る露店や日用品を売る店などを見て回る。店はたくさんあり活気がある。しかし富める人とそうでない人との差がありそれでも人々の必死に生きて行く現実を見せられる。

今回の目的の一つとしてヒマラヤを見ることがあったが、残念ながらポカラに行く途中の峠で見たアンナプルナの頂きの部分しか見えなかった。ポカラでは山国の感じではなく一転して南国の雰囲気、ダムを造ってできた湖の周りはホテルが多く、山用品を売る店や日本語の看板が目に付く。ホテルは筏をつかって湖を渡るフィッシュテール・ホテル。

この時期は雨期で平野部では天気がよいが山は雲の中、その日泊まった夜は雷雨で翌朝はどしゃ降りの雨、昼は晴れた。ポカラからカトマンドゥに帰る途中も山は雲の中だった。しかしポカラへ向かう峠で見た白い頂きは忘れることが出来ない。デリーの自然がいっぱいの町並み・オールドデリーの賑やかさ・カトマンドゥの路地の朝や旧王宮の広場・インド最大の都市カルカッタの喧騒などまだまだ魅かれる。インド・ネパールは何回見ても驚き、飽きさせない魅力がある。