高 荷 信 夫
インドへの旅は、今回で2度目になるが、今回のインドは匂いのない旅であった。前回(10年近く前)のインド旅行の時は、先ず、匂いに強烈なカルチャーショックを受けたものだった。匂いとは、香の匂いである。前回はカルカッタからインドへ入ったのだが、最初のホテルでの息もできぬ程の強烈な香の匂いは、私にとって大きなショックであった。空港も、町も川も、建物も人も、香の香り一色であり、そんな理由で、インドに対する第一印象は、”インド=香のかおり”であった。
今回は、そんな香のイメージのない旅であった。デリーからの入国ということもあるのだろうか?。否、マナリでもボンベイでも、またゴアでも、香のイメージはなかった。インドも前回とは確実に違ってきているのだろう。前回は使い捨てライターが人気であったが、今はボールペンらしい。前回は、このライターで、お金がわりに、物々交換で、物が手に入れられたものだが、今回はそんな事もなく、物価も倍以上になっていた。前回は、ホテルのボーイまでもライターを欲しがったものだが、今回はチップの方がうれしいらしい。
今回も前回も変わりないのは、素朴な感じがうれしい。また、誰もかれも隙があれば、ボッてやろうと狙っている。その上外国人とみるや、誰かれなく物をねだるくせに、自国の商品をあげても、興味を示さない。真に自分の欲求に忠実で、興味深く、愛らしい人々だ。素朴で、欲求のままに、抜け目なく、自然のままに暮らしている。日本人と違った暮らしぶりに、興味も尽きず、またなんとなく懐かしさみたいなものを覚える暮らしぶりである。インドは不思議な国である。
さて、トレッキングの方はと言うと、ヒマラヤという未知の世界でもあり、不安と期待との入り混じった複雑な気持ちであったが、実際行ってみると、楽しい所である。
行程も、高所(3000〜4000m)ということもあり、かなりゆるやかなものであり、また、ゆとりのあるもので、楽しいトレッキングであった。日本での山行をイメージしていたので、かなりきついものを覚悟していたが、初心者のパーティーということで気を遣ってくれたのか、かなりのスローペースでのトレッキングであった。おかげで、バテることもなく快適なトレッキングを楽しませて頂いた。
欲を言えば、デリーからマナリへのバスの移動は、楽な方が良い。バスの移動も、それ自体は、途中の色々な出来事があって面白いものだが、身体にはちょっとこたえる。
話はとぶが、後半の自由行動では、他の隊員の方々に、とても気を揉ませることになり、ご心配をおかけしたことをお詫びします。
しかし、この飛行機のキャンセルでデリーに戻れなくなった1日は、却って、自分にとっては、有意義な楽しい時間となりました。擦れちがう程度の知り合いにしかならない旅を、共通の問題を抱える仲間として、知らぬ者同志が、じっくり話し合う機会がもてたのは、逆に幸運だったと言える出来事でした。気にかかるのは、せっかくゴアの町を案内してくれたデリー大学のMitra教授に、「タクシー代を割り勘にしよう」と言っておきながら、「支払は地元の人間の方が良い」という言葉に甘えて、立て替えてもらいっぱなしになってしまったことである。日本人は口先だけだと誤解していないことを期待しています。心優しいインドの人々に詫びつつ感謝。